比企ライフネット 話題のこーなー

 
● 2003年4月18日 記 (埼玉県比企郡小川町大塚より)

惜別 取り壊された劇場相生座

 −小京都小川町に花開した演劇文化の証し−

“米寿”の年に惜しまれつつ解体

さる4月12日(土)のことだそうです。やむを得ない事情があったのでしょう。
小川町立図書館近くに、往時を偲ばせる姿で佇んでいた旧劇場相生座(あいおいざ)の建物が、
惜しまれつつも解体されてしまったそうです。
相生座は1915(大正4)年に落成し、1970(昭和45)年に閉鎖されるまで、
半世紀以上にわたって比企の演劇文化の中心的な役割を華やかに担ってきました。
数々の演劇や歌舞伎、歌謡ショーなどが上演され、
かの美空ひばりが本格デビューする前に来座したこともあると伝えられています。
また手前の敷地は興業スペースとしても使用され、サーカスなどが来ることもあったそうです。
写真でもお分かりいただけるように、入口や2階席付近の造りに独特な雰囲気を残していました。
解体されるのなら、もっと細部の撮影もしておけば良かったのにと、悔まれてなりません。

新らしき娯楽の泉(「商売繁盛すごろく」より)

「新らしき娯楽の泉」。これは昭和初期の新聞チラシに見られる相生座のキャッチフレーズです。
そのチラシは1932(昭和7)年1月1日付の東京日日(にちにち)新聞に折り込まれたもので、
「商売繁盛雙六(すごろく)」と題し、「振出し」から「上り」まで36マスの中に、
小川町の有名商店の広告が“かなりハイカラな”カラーイラスト入りで掲載されていました。
その中で劇場相生座が占める場所はズバリ、栄えある勝者を迎える「上り」!
そこには観劇に出かける2人の着飾った若い女性(1人は三つ編みに和服姿、もう1人はショートカットに
帽子を被った洋服姿)が描かれ、町で一番楽しいお洒落なスポットだということを高らかに謳っています。
ちなみに「振出し」は駅前の小川タクシー。
タクシーで町中の名店を買物三昧、締め括りに観劇までできるとは、
お正月とはいえ何てリッチな演出なんでしょう(笑)。
このすごろくのカラー写真は、『小川町の歴史 絵図で見る小川町』 (1998年6月 小川町編集・発行)の
168〜169ページに、堂々見開きで掲載されています。
※購入方法は、
小川町役場公式サイトの生涯学習情報欄にある町史編さんのページをご参照ください。

在りし日の相生座

「座生相」と右から書かれているところにご注目を。
上小川神社の夏祭り(祇園祭)の日に撮影したため、入口にしめ縄が飾られています。
手前の敷地は整骨院の駐車場として使用中。

撮影:2002年7月28日

この写真を撮った日は町最大のイベント、七夕まつりの日でもありました。
小川町の七夕まつりはもともと月遅れの8月6〜7日に行われていましたが、1971(昭和46)年から上述の祇園祭と時期を合わせるようになり今日に至っています。

相生座の解体現場

撮影:2003年4月中旬

参考文献 : 『メールマガジン 小川まっぷ』2003年4月16日付生活工房「つばさ・游」 編集・発行)
        『おがわまちマップ』第9号 (2003年1月18日 生活工房「つばさ・游」 編集・発行)
         ※相生座の地図と説明が記載されています。
          PDFファイルが
『おがわまちマップ』のホームページ からダウンロードできます。

参考図書 : 『小川町の歴史 絵図で見る小川町』 (1998年6月 小川町編集・発行)
       
『小川町の歴史 別編 民俗編』 (2001年3月 小川町編集・発行)

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この記事の更新履歴

2003.05.08 相生座の解体現場の写真を追加。
2003.04.18 UP。