比企ライフネット 話題のこーなー

 
● 2003年3月17日 記 (埼玉県比企郡小川町角山より)

2億年前の地球の鼓動を偲ぶ
 - ジュラ紀の土から生まれた酒器を訪ねて -

《取材協力》
おがわ温泉
花和楽の湯
店主 新田悟詞 さん

小川町のご出身で下里に窯場を構えていらっしゃる、陶芸家のSさん。先頃ある方から、Sさんが
ちょっとほかでは見られないような素晴らしい作品の創作に着手した、との知らせを受けました。
とても素朴で、でも何か表には現れない力強さを秘めていて、それが手にする人に温もりとなって伝わって
くる、そんな酒器の数々。これで小川の地酒をくぃーってやったら、あ〜も〜たまらん〜\(@@;)/
(※管理人は自他ともに認める日本酒好きですが、無類の下戸でもあります。盃1杯で真っ赤っ赤・・・。)
その作風の魅力もさることながら、ぜひお伝えしたいのが手に触れたときの素材感、すなわち粘土の質!
ネットでは画像でしかご紹介できないのがほんとうに残念です。
もちろんここで自慢するからには、わが小川町産の土です。それも
地下1000メートルもの大深度から
掘り出された、およそ
2億年前の中生代ジュラ紀に形成された地層の土が、素材として使われているの
です(もとは硬い泥岩が、掘削機に削られて粘土状になったものです)。

3月の半ば、その作品を見せていただくため、今秋オープン予定の“おがわ温泉 花和楽の湯(かわらのゆ)”
の工事現場を訪問しました。なぜ? 温泉の工事現場???
何を隠そう、この温泉の源泉井戸こそがSさんの作品の素材のふるさと。粘土採掘の地だったのです。
陶芸といえば、思い浮かぶのが伝統工芸のイメージ。
でも、工芸のため土を求めて1000メートルも掘削するという伝統は、おそらくどの地方にもありますまい。
この土、もうお察しのことと思いますが、昨年温泉掘削中に掘り出されたものだそうです(
参考ページ)。
何かに生かせないかと考えていた花和楽の湯の店主、新田悟詞さん(まだ33歳の若さです)。そこへ
知人のすすめもあって、地元出身のSさんに作品を創っていただこう、という話しになったのだそうです。
そして、試行錯誤の末でき上がった最初の試作品が、ついに3月10日、新田さんのもとへ届けられたのです。

源泉の側に立つ新田さん。
すべてはここから始まりました。
後ろに積もった灰色の土も、地下深いところから掘り出されたものだそうです。

届けられた試作品の数々。手前は徳利。奥はバラエティー豊かなぐい呑みや小皿。手に触れ、飲みものを口へ運ぶ器だけに、仕上げや土の調合などには細かく気が配られているということです。花和楽の湯併設の料理店でお目見えする予定。Sさんの仕事場は、お許しがいただけたらぜひ訪問取材したいと思います。

作品ぎゃらりー
* クリックで拡大できます *

こちらは花瓶。
素材の素朴さがそのまま生かされた仕上げです。
Sさんともお知り合いの陶芸家の方の作品だそうです。

ジュラ紀の地層について

地質時代の区分でいう中生代ジュラ紀とは、約2億500万年前から1億3500万年前までの時代を指します。巨大恐竜が地上を支配した時代として関心を持つ人も多いことでしょう。日本列島の原型はこの頃でき上がったと考えられていますが、当時比企一帯は深い海の底で、泥がさかんに堆積して泥岩の層が形成されたようです。町内には、この泥岩が地殻変動で地上に露出しているようすを観察できる所もありますが、今回のように地下1000メートルの地層から掘り出される機会は、多分極めて少ないのではないでしょうか。

参考図書 : 『小川町の歴史 別編 小川町の自然 地質編』 (1999年3月 小川町編集・発行)

関連ホームページのご案内

「おがわ温泉 花和楽の湯」公式サイト http://www.kawarano-yu.com/
メールマガジン「成功なるか?温泉開業日記」
 http://www.kawarano-yu.com/mag/

花和楽の湯 所在地
〒355-0316 埼玉県比企郡小川町角山26番地2 電話0493-72-0462(担当:新田)

取材では、新田さんから温泉掘削の経緯やこれからの抱負について、いろいろとお伺いすることができました。
実はこれまで小川町は、専門家の間では「温泉が出ない地質」と言われていたそうです。それが、定説にとらわれない調査会社の熱心さに支えられ、見事湧出に成功したとのこと。小川にはもっともっと、良いところがたくさんあるはず。その1つを掘り出すことができた喜びが、お話しを伺っているこちらにもひしひしと伝わってきました。
新田さんは「小川町は一流の田舎になればいい」と語っていました。そうです。都会や有名観光地を真似する必要なんて全然無いんですよね。これは誇って良いことですよ。田舎=時代遅れ、なんていう認識こそが時代遅れなのだと、私は思います。
これから建つ温泉施設は、この土地に相応しい、自然や伝統文化をありのまま味わえるような、そんな施設になりそうです。
『比企ライフネット』や『比企の里だより』では、これからもたびたび温泉の近況をお知らせして行きたいと思っています。

グランドオープンは4月27日*おがわ温泉 花和楽の湯(2004年4月8日 記)も併せてご覧下さい。

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