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2005年05月26日
尼崎JR脱線事故について (その6)
事故車、JR西日本207系電車の走行性能を検証
今回脱線事故を起こした電車は、207系と呼ばれる比較的新しい電車です。
グループ各社に先駆けJR西日本が独自開発した新性能通勤電車で、1990年代初めに近畿圏へ続々投入された後、宝塚線(福知山線)・東西線・学研都市線(片町線)直通の快速運用を中心に使用されています。
1960年代以来あまり改良のなかった国鉄時代の電車に比べ、走行性能や節電効果を高めるための新機軸が積極的に盛り込まれており、デビュー当時は「ハイテク電車」として注目を集めたようです。
その性能を改めて検証するため、次表に一連の記事中で取り上げた他の電車との比較をまとめてみました。
比較対照としたのは、同じJR西日本の東海道・山陽本線新快速用223系、私の地元で東武鉄道東上線の地下鉄直通用9000系、そして京浜急行の京急本線快速特急用2100形(がた)の3車種です。
車種ごとの諸元は次の各社の公式サイトを参照しました。東武、京急が詳しく情報公開しているのに対し、JR西日本は製造初年と最高速度だけでしたので、仕方なくネット検索で複数のアマチュア鉄道研究家の方々のサイトを参照させていただきました。
*各鉄道会社公式サイトと車両紹介のリンク集*
JR西日本:鉄道ギャラリー 車両図鑑 207系
JR西日本:鉄道ギャラリー 車両図鑑 223系
(↑上記各車両の詳しい諸元は公式サイトに記載されていません。)
東武鉄道:電車の設備概要
京浜急行:京浜急行車輌図鑑 2100形
なお余談ですが、東武鉄道は1897(明治30)年創立、京浜急行電鉄の前身は1898(明治31)年創立で、現存する日本の鉄道会社としては特別に長い歴史を持っています。
最高速度だけが走行性能の評価を決めるのか?
走行性能について最高速度しか誇ろうとしないJR西日本のコマーシャル意識には、正直落胆しました。
私が一番知りたかったのは、表の「最高速度」欄の隣に記した「加速度」の方だったのです。
加速度とは、発車してからある程度の速度に達するまでに、毎秒、時速何キロずつ速度が上がって行くのかを示した値です。
間接情報では、207系の加速性能は国鉄時代の水準よりも改良されているようですが、ご覧のように、私鉄にはもっと加速性能の高い電車も在籍しています。
宝塚線の快速は停車駅が多く、最高速度で走れる区間も短いことから、無理に速度を上げてもダイヤが遅れた場合の回復効果は少ないことが、事故調の調査でも確認されています。
加えて、207系電車は開発段階ですでに、地下を走る東西線への乗り入れが予定されていました。
地下区間は公道に沿って建設されるため、急な勾配やカーブが多く、使用される電車には高速性能より加速性能の高さを求められるのが普通です。
私には、設計時点でモーターの減速ギア比をより大きくし、最高速度を若干下げてでも加速性能を高めた方が、始発から終点までトータルでの所要時間を縮められたように思えるのです。
東武東上線の9000系電車は四半世紀も前に基本設計が成されましたが、東京地下鉄有楽町線に乗り入れる関係で、最初から加速性能重視で開発されました。
当時は建造コストのかかる電車で、増備も乗り入れに必要な両数に抑えられましたが、今日ではコストの問題もほぼ解消されています。
その結果東武では1996年秋以降、新造通勤電車は一貫して加速性能が優れた車種を投入し続けています。
なお東武は公式サイト上の電車の諸元欄で、非常ブレーキの性能(減速度)も公開しています。
〔続く〕
西日本旅客鉄道(株) JR西日本公式サイト
国土交通省:福知山線における列車脱線事故について
同 :航空・鉄道事故調査委員会
*通信社&新聞各紙 4月25日以降の関連記事リンク集*
共同通信社:ニュース特集・尼崎JR脱線事故
「神戸新聞」:特集・尼崎JR脱線事故
「朝日新聞」:ニュース特集 尼崎・列車脱線事故
「読売新聞」:特集 尼崎・脱線事故
「毎日新聞」:尼崎列車脱線特集
項目: 東武・JR
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