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2005年06月07日
尼崎JR脱線事故について (その10)
急報! ブレーキ異常の疑惑浮上 事故調が調査を進める
6月7日付「読売新聞」:脱線電車と同様の車両連結「ブレーキ異常」
同日付「読売新聞」:207系電車、製造時違う車両連結でブレーキ異常?
兵庫県尼崎市のJR福知山線で脱線した快速電車と同型の207系は、製造時期の異なる車両を連結した場合、一時的にブレーキが利きにくくなったり、強くかかり過ぎたりする現象が起きることが6日、わかった。
JR西日本の技術者が2000年12月の日本機械学会・鉄道技術(連合)シンポジウムで報告していた。快速電車も同様の連結で、事故当日、オーバーランを繰り返しており、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会などは関連を調べる。
(出展:6月7日付「読売新聞」 脱線電車と同様の車両連結「ブレーキ異常」)
とうとう新聞にも書かれたか…と、記事を読みながら深いため息をついてしまいました。
事故当日の夜、現場からの中継画面に映った事故調委員の方々の重苦しい表情、そして「いくつもの原因が複雑に絡んだ事故。慎重な調査が必要」とする代表者コメントが改めて思い出されます。
207系電車の性能に事故直後から疑問を抱いていた私は、手掛りも無いまま幾つものアマチュア鉄道研究家の方々の個人サイトを訪ね、同型車には増備の途中、ブレーキも含む動力制御装置の大幅な設計変更があったことを知りました。
ここで驚いたのは、JR宝塚線(福知山線)では、設計変更前と後の電車とではまったく区別されることなく、常時併結運転が行われていたということです。
設計上で性能の異なる電車同士の併結運転は珍しいことではないのですが、常に高速で発車停車を頻繁に繰り返す条件下ではあまり聞いたことがなく、私は「オーバーランや減速エラーを誘発し得るのでは」と内心思ったのです。
そこで、報道を追いながらしばらく様子を伺っていたのですが、専門家の間からはそのような問題点の指摘は一向に無く、結局自分の抱いた疑問は素人考えに過ぎなかったのだと納得するようになりました。
それでもどこか釈然としない部分もあったので、5月26日付記事に挿入した表「各社主力電車の性能比較」の207系の欄内に、備考として「合理化のため後期型の動力装置は223系との共通点が多い。性能は初期型に合わせて調整され併結運転も行われている」とだけ、記しておくことにしたのです。
(表中に記した、東武東上線の9000型と9050型との間にもこれに似た設計変更がありますが、併結運転は行われていません。)
しかし、まさかと言うべきか、やはりと言うべきか、ここへ来てこの疑問に再度触れることになろうとは!?
事故の真相解明まで、どうやら相当の時間がかかりそうな気配です。
それにしても、4年半前の学会シンポですでに、JR西日本の技術者がこの問題点を報告していたとは、記事を読むまで知る術もありませんでした。
事故調委員の方々は当然詳しくご存知のはずですから、当初からブレーキ異常も視野に入れ、物的証拠の収集解析に力を注いでこられたことと思います。
昨日になって事故調が新聞取材に応じたのは、何らかの証拠が得られたからなのでしょうか?
それとも、学会報告をよく知る記者が、独自に関係者へインタビューして記事にまとめたのでしょうか?
もし事故直前の、運転士の不可解な動作の背景にブレーキ異常もあったとしたら、社会が受けるショックは計り知れないものがあります。
批判や責任追及は当事者ばかりでなく、車両の設計開発に関わったメーカーや研究者など、鉄道工業界全体にまで及ぶことになるかもしれません。
上記6月7日付「読売新聞」記事で、JR西日本は取材に対し、
「異なる番台(同型の車両の製造順や仕様の違い等を示す管理番号)でも(併結で)運用を続けているが、実際の運転に影響があったという報告はなく、全く問題ない」
と説明しているそうです。
同紙記者は、学会シンポで報告を述べたという「JR西日本の技術者」にも、取材することはできたのでしょうか?
今後の報道の展開も気になるところではあります。
<参考> 日本機械学会公式サイトからの引用です。
第7回 鉄道技術連合シンポジウム プログラム(抜粋)
(J-RAIL 2000) 2000年12月13~15日開催
12月13日 OS20 特別セッション(車輪-レール系)
16.40~17.40 車輪滑走と制御 〔座長 曽根悟※(工学院大)〕
1112 VVVF車両における電気ブレーキと空気ブレーキ
との協調について(207系電車の場合)
○大上和久(JR西日本),今村洋一
※(管理人注)
曽根悟(そねさとる)工学院大学教授・東京大学名誉教授は、鉄道をはじめとする交通システム工学の専門家としてたいへん著名な方です。
事故直後からテレビの報道番組などに数多く出演されているので、覚えておられる読者もいらっしゃると思います。
5月26日にはJR西日本から、「企業風土の刷新」のため教授を社外取締役に迎える方針が発表され、話題になりました。
5月26日付「神戸新聞」:JR西社外取締役 曽根・東大名誉教授就任へ
5月26日付「読売新聞」:専門家の工学院大・曽根教授、JR西社外取締役に
私は学生時代、カメラを携え全国各地を鉄道で旅しましたから、今も鉄道への愛着は人一倍ありますし、ある程度の予備知識も持っています。
しかし、専門的に鉄道を趣味にしているアマチュア研究家の方々のようなレベルには、到底及びません。
今回の事故の悲惨さや原因の複雑さ、社会への影響の大きさを考えると、これ以上の深追いはもう、自分の力量では無理だろうと感じています。
まず最低限、207系電車の動力装置とブレーキの原理について間単にお話しし、後はテーマを地元の東武東上線の方へ移して行きたいと考えています。
〔続く〕
西日本旅客鉄道(株) JR西日本公式サイト
国土交通省:福知山線における列車脱線事故について
同 :航空・鉄道事故調査委員会
*通信社&新聞各紙 4月25日以降の関連記事リンク集*
共同通信社:ニュース特集・尼崎JR脱線事故
「神戸新聞」:特集・尼崎JR脱線事故
「朝日新聞」:ニュース特集 尼崎・列車脱線事故
「読売新聞」:特集 尼崎・脱線事故
「毎日新聞」:尼崎列車脱線特集
項目: 東武・JR
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