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2005年06月01日
尼崎JR脱線事故について (その8)
*5月26日付「事故車、JR西日本207系電車の走行性能を検証」の続きです。
JR西日本が「安全性向上計画」に“所要時間延長”を盛り込む
6月1日付「神戸新聞」:安全投資600億円増 JR西、国交相に計画提出
5月31日付「朝日新聞」:JR西日本が安全性向上計画を提出
垣内剛JR西日本社長は昨日5月31日の午後、国土交通省本省を訪れ、北側国土交通相に安全性向上計画を提出しました。
(計画の全文は、次の5月31日付JR西日本資料をご覧ください。)
資料)安全性向上計画(PDF)
この計画案は、事前にJR西日本側と国交省側との内部間で協議を重ねた末まとめられましたが、各紙報道から読み取る限り、事故に対する反省の示し方については最後まで両者の間にすれ違いがあったようです。
6月1日付「読売新聞」:社長決意「肉声」遠く…安全計画
5月31日付「読売新聞」:安全性向上計画 「謝罪」と「誓い」盛る
5月28日付「毎日新聞」:国交相、JR西社長に反省文書き直し求める
5月25日付「神戸新聞」:認識ズレ大きく 「安全性向上計画」策定大詰め
当ブログ記事では数ある事故の反省点のうち、ダイヤ上の所要時間と制限速度との関連いついて、車両の性能も含めて取り上げてみたいと思います。
速度制限をめぐって、計画策定の段階でJR西日本と国交省との間には、次のような認識の違いが見られました。
JR西日本:
「速度は国の法令に基づいている。ルールを守っていれば事故は起きなかった」
「車両に能力があるのにスピードを落とすことは、乗客への背信だ」国交省:
「ルールうんぬんよりも、あれだけの事故を起こしてしまったのだから、制限の見直しは当然」
(上記5月25日付「神戸新聞」記事より)
紙面からは取材内容の一部しか窺えませんが、自粛運転での反省表明を求める国交省に対し、JR西日本側は理屈で抵抗していたように受け取れます。
結局、JR宝塚線(福知山線)は全線の最高制限速度を100km/h以下に抑制。東海道本線でも、新快速の所要時間については三ノ宮~京都間のうち、大阪までの間を1分延長するなどの見直しが盛り込まれました。
5月31日付「読売新聞」:福知山線、最高速度100キロに抑制
同日付「神戸新聞」:安全重視意外な波紋 三ノ宮―大阪・新快速1分延長
JR宝塚線(福知山線)の全線で100km/h以下に速度制限するのは、脱線現場となった急カーブの制限速度を70km/hから65km/hへ下げるとともに、手前の直線区間との制限速度差を35km/h以内に抑えるためだそうです。
同線では、運行再開に向けて新型ATS(自動列車停止装置)による速度超過防止対策が施されるとのことですが、どんなシステムでも「絶対安全」ということはないはずです。
複数のトラブルが重なって自動減速が間に合わない場合でも、脱線しないような運転計画や安全設計を考える余地は元々十分あったと言えるでしょう。
伊丹駅の前後以外は全線に渡りカーブの多い線ですから、そもそも100km/hを超えるような高速運転は、曲線が連続する区間に合わせた特殊設計の車両に限って行われるべきでした。
そうした車両であれば、車体が遠心力でカーブの外側へ傾くのを防ぐ機構が台車に装備され、重心も低く一般の車両より高速で走行することができます。
もっとも製造費や維持費がかかることもあり、JR西日本では今のところ、他の路線の一部の特急にしか投入していません。
また東海道本線についてですが、新快速用の223系電車は確かに130km/hで走行できる性能を備えています。
ただしその性能をフルに発揮させるには、新幹線のように途中通過駅のコースをなるべく直線に近付けるなど設備の改良が前提になります。
伊丹市の村山さんがメールで教えてくださった現役運転士さんの証言を読ませていただく限り、現実の新快速は走行性能を発揮しにくい設備環境で、ギリギリまで背伸びしたダイヤで運行されているようです(5月17日付記事参照)。
物理的に設備改良が不可能なら、減速後スムーズに130km/hまで再加速できる性能を電車に持たせなければなりません。
技術的には、採算が合うなら編成中の動力車の両数(モーター付車輪の数)を増やすことで解決できる問題なのですが、223系はその数を徹底的に減らす方針で開発された車両だったのです。
〔続く〕
西日本旅客鉄道(株) JR西日本公式サイト
国土交通省:福知山線における列車脱線事故について
同 :航空・鉄道事故調査委員会
*通信社&新聞各紙 4月25日以降の関連記事リンク集*
共同通信社:ニュース特集・尼崎JR脱線事故
「神戸新聞」:特集・尼崎JR脱線事故
「朝日新聞」:ニュース特集 尼崎・列車脱線事故
「読売新聞」:特集 尼崎・脱線事故
「毎日新聞」:尼崎列車脱線特集
項目: 東武・JR
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