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2006年10月23日

アドビが「Photoshop Lightroom日本語版パブリックベータ 4」を公開

2007年4月30日まで無償で試せる

10月19日、アドビは「Photoshop Lightroom日本語版パブリックベータ 4」を公開しました。
本ソフトは各社デジタルカメラのRAW現像やRAW印刷、閲覧にも対応した総合画像管理ソフトで、定番のレタッチソフト「Photoshop」シリーズを補完するものです。日本語版パブリックベータはこのバージョンで初めて公開され、Windows版、Macintosh版とも2007年4月30日まで無償で試すことができます。試用時は他のソフトを閉じ、読み込むファイルは用心のため事前にバックアップを取っておいた方が良いでしょう。要望や不具合は、次のアドビ公式サイトのコメントフォームから報告できます。
なお、英語版の発売は2007年前半ですが、日本語版については未定。価格は「Photoshop Elements」(5.0の通常パッケージ版は税込14,490円)より少し高くなる見込みとのこと。

 アドビ システムズ:製品/「Photoshop CS2」
  「Photoshop Lightroom日本語版パブリックベータ 4」
  同、ダウンロードページ同、要望/不具合報告コメントフォーム

 「デジカメWatch」:2006年10月19日付記事
  アドビ、「Lightroom日本語版β4」を公開

 「デジカメWatch」:2006年10月19日付記事
  アドビ、Lightroom β4 日本語版の説明会を開催

まるでショーを演じるように

写真館対象のセミナーなどでよく、講師の方に「Photoshop」による色調補正の手順を見せていただく機会があるのですが、その鮮やかな捌きには思わず見とれてしまいます。しかし、もともと合成などのデザインツールとして開発された「Photoshop」では、フォトグラファーによく使われる色調補正関連の各機能が普段は収納された状態で、それも1つずつしか使うことができません。そのため、素早く大量の画像を処理するには相当の熟練が必要になります。「Photoshop Lightroom」はこの難題を解決してくれる、現れるべくして現れた待望のソフトなのです。

例えば、写真館で撮ったばかりの姿をお客さまに選んでいただくとき、また広告の撮影現場で写真を見ながらクライアントさんやデザイナーさんと打合せをするとき、「Photoshop Lightroom」があれば相手をお待たせしなくて済みそうです。従来のソフトで色調補正に手間取っていたら相手の方はとても付き合いきれなくなってしまいます。ましてや撮影がRAWモードなら、その調整や現像にも時間を取られてしまうでしょう。
「Photoshop Lightroom」の魅力は、色調補正に必要なあらゆる機能がすべて、画面右側にすぐ使える状態でコンパクトに並んでいるところにあります。そればかりか、ハイライトから中間調を経てシャドウに至るまで、わずかなマウスの移動だけで自在に画像の調子をコントロールすることもできるのです。私のパソコン(Windows XP)のスペックはCPUがCeleron 2.4GHz、メモリが1.0GBですが、その程度でも動作は結構快適です。英語版の「パブリックベータ 3」はやや重く少ししか試せませんでしたが、この分なら製品版はより快適になってくれそうで、発売がとても楽しみになってきました。開発者の方々も、この点は特に配慮されたようです。デザインも操作性も洗練されているので、撮影依頼者がディスプレイの前で色調補正に立ち会っても、決して退屈はしないでしょう。

まるで舞台の上でショーを演じるように画像が操れるソフト。アドビの開発陣がイメージした「Photoshop Lightroom」は、きっとそんなソフトなのでしょう。実際、スライドショーを閲覧しながら大量のRAW現像調整や画像の色調補正を次々に進めていくことができるのです。調整内容は自動的に、「XMPサイドカー」と呼ばれるファイルに保存、読み込みできます。色調補正が済んだ画像はすぐ、印刷したりWEBコンテンツとして閲覧したり、さらに「Photoshop」で開いてデザイン素材に用いることもできます。世界的トップメーカーが時間をかけて開発しただけのことはあります。

ハイライトからシャドウまで広い諧調を再現

RAWファイルはイメージセンサーがとらえる広い範囲の諧調を記録しますが、標準の明るさでRAW現像すると、ハイライトかシャドウのどちらか、場合によっては両方の諧調再現が損なわれてしまうことがしばしばあります。これは、JPEGモード撮影の場合も同様です。
「Photoshop Lightroom」での露光量調整(明るさの調整。他のソフトでは露出補正や増減感など)は、画像全体のほか、ハイライト部とシャドウ部とを分けて行うこともできます。つまり、露光量(言い替えると現像量)を明る過ぎる部分は控えめに、暗すぎる部分は多めに調整できるのです。ハイライト部の調整機能だけなら市川ソフトラボラトリーが先月発売した「SILKYPIX Developer Studio 3.0」にも採用されていますが、シャドウ部まで同じ操作画面上で別々に調整できるのはたいへん便利です。これは、アドビが今年6月に買収したPixmantec発売のRaw現像ソフト「RawShooter」の機能を継承したものだと思われます。快適な動作や洗練されたデザイン、操作性も、アドビ開発陣と旧Pixmantec開発陣との協業の成せる業でしょう。このようなソフトがあってこそ、RAWモードで撮る意味も高まるというものです。

 「デジカメWatch」:2006年6月27日付記事
  Adobe、RAW現像ソフトのPixmantecを買収

なお、レタッチとしてハイライトやシャドウの明るさを調整する機能は、すでに「Photoshop」の現行シリーズやニコン発売の「Nikon Capture4」、「CaptureNX」などにも採用されています。しかし、それらの機能で再現できる諧調の範囲には限界があります。

JPEGモードで撮影した写真の色調補正にも有効

「Photoshop Lightroom」のセールスポイントについて、アドビはRAW現像機能の使いやすさを強調していますが、JPEGモードで撮影した写真の色調補正にも有効です。興味深いのは、RAW現像のための基本補正に含まれる各種調整機能を操作しても、JPEG形式やTIFF形式などの画像の色調補正ができるということです。
JPEGやTIFFなどの画像をRAWデータとして処理する技術は先述の市川ソフトラボラトリーが「SILKYPIX RAW Bridge(シルキーピックス ロウ ブリッジ)」の名称で開発し、同社の「SILKYPIX Developer Studio 3.0」で実用化しました。「Photoshop Lightroom」にもこれと同様の技術が採用されているのかどうかは、アドビのコメントがまったく無いので分かりません。あるいは、類似の効果が得られるレタッチ調整機能に切り替わるだけかもしれませんが、いずれにせよ詳細は製品版の正式発表待ちということになりそうです。

「Exif Print」もサポート!?
注)残念ですが、現時点ではサポートされていないようです(下欄参照)。

現在発売中のデジタルカメラの多くは「Exif Print(イグジフプリント、規格名称Exif 2.2)」に対応しています。これは、撮影時のカメラのあらゆる設定情報をプリントの自動色調補正に利用するため、2002年2月に(社)電子情報技術産業協会(JEITA)で制定された世界標準規格です。カメラメーカー純正のRAW現像ソフトも、「Exif Print」をサポートしているのが普通です。

 社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)公式サイト
 有限責任中間法人 カメラ映像機器工業会(CIPA)公式サイト「Exif Print」

しかし、RAW現像ソフトで任意に補正された色調が自動プリントで再補正されては、撮影者が意図しない仕上がりになる場合もありえます。ニコンはそのためか「Nikon Capture4」以降、別売RAW現像ソフトでの「Exif Print」サポートをやめています。また、市川ソフトラボラトリーの「SILKYPIX Developer Studio」では「Exif Print」の規格に準じた現像はできるものの、自動補正をするかどうかはプリンターのドライバーソフトなどで決めるよう設計されています。このことについてメーカーへ問い合わせたところ、やはり「SILKYPIXで調整された映像は、基本的にはプリント時にさらに補正されるべきではない」という趣旨の回答をいただきました。

「Photoshop Lightroom」は、確定ではないかもしれませんが、どうやら「Exif Print」をサポートすることになりそうです。撮影後にすぐ写真を選んでプリントしたいときなど、たいへん役立つはずです。
なお、現行の「Photoshop」シリーズに付属のRAW現像機能、「Camera Raw」は、「Exif Print」には対応していません。レタッチを前提に、「Photoshop」で手早くRAWファイルを開くための機能として位置付けられているからでしょう。

*ご参考

「Photoshop Lightroom」でRAW現像すると、JPEG形式、TIFF(8bit/16bit)形式とも画像ファイルに「CR(Custom Rendered)タグ」がOFFの設定で付いてきます。「CRタグ」とは「Exif Print」に基づく情報タグで、これをONに設定すればプリンターの自動色調補正は解除されます。

「Photoshop Lightroom」に「CRタグ」のON、OFFを切り替える機能は備わっていませんが、それができるソフトもあります。フジフイルムのデジタルカメラ同梱の画像管理ソフト「FinePixViewer(Ver.3.2以上)」には専用の追加機能として「プリント自動補正解除指示(CR)ON/OFF切替ツール」が用意され、私も利用しています。また「FinePixViewer(Ver.4.0以上)」では、「Exif Print」に基づく各種情報と合わせて「CRタグ」の設定を参照することができます。

なお、市川ソフトラボラトリーの「SILKYPIX Developer Studio」では「CRタグ」が常時ONの設定で現像され、ユーザーがOFF設定を選ぶことはできません。

業界標準のソフトとして

「Photoshop」シリーズはすでにデザイン、印刷業界だけでなく写真関連業界でも標準ソフトとして定着しており、「Photoshop Lightroom」はその完成度を高めるためにも無くてはならないソフトになるでしょう。
個人が作品制作用として、あるいは写真の勉強用として使うには、もっと安くて多機能なソフトがほかにあります。しかし、公の場で十分商用に耐えるソフトとなると、残念ながら今までは無かったように思えます。
RAW現像や画像ファイルの管理、利用に便利なソフトも、選択の幅がだんだんと広がってきましたね。


注)「Exif Print」もサポート!? (2006年11月21日追記)

残念ですが、現時点ではサポートされていないようです。
「Photoshop Lightroom」で出力されたJPEGなどの画像ファイルの添付情報を富士フイルムの「FinePixViewer(Ver.4.0以上)」で確認すると、「CRタグ」がOFFの設定で付けられています。このことから「Exif Print(Exif 2.2)」準拠のExif-JPEGなどのファイル形式で出力されているものと思われたのですが、実際はそうではなく、単にCRタグが付くだけだったようです。
なお、「FinePixViewer」の保存形式変更機能で、「Exif Print(Exif 2.2)」準拠のファイル形式に一括変更することができます。

項目: 写真・カメラ

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