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2006年08月31日

一眼レフカメラという商売 (その2 ペンタックスのソリューション)

〔一眼レフカメラという商売 (その1 家電メーカーの挑戦)へもどる〕

期待したい、ペンタックスがこれから展開するソリューション

ペンタックス上級執行役員の鳥越興さんが、この春米国で開催された「PMA」ショーでImpress Watchのインタビューに応じ、開発中の新製品を軸としたビジネスソリューションの展望について回答されています。その内容は、キヤノンのコマーシャルフォトスタジオ向けデジタル一眼レフであり、最上位機種に位置するEOS-1Ds Mark IIに対して、真っ向からライバル宣言するものでした。

「この世界はトータルソリューションとしてビジネスモデル、市場環境を整えていかなければうまくいきません。スタジオやコマーシャルフォト、印刷関係といった現場に対して、入力の道具としてカメラを提供するだけでなく、加工、保存、出力といったトータルのソリューションを提供していかなければなりません〔中略〕まずはしっかりとカメラを作り、それをもっていろいろな意味で、いろいろなところと提携、協業を進めていきます。デジタル技術を用いた新しい道具として、ユニークな環境を作れると確信しています」

 「デジカメWatch」:2006年2月27日付記事より抜粋
  【インタビュー】デジタル一眼に必要な要素のすべてに取り組む
  ペンタックス上級執行役員イメージングシステム事業本部長 鳥越興氏

まだ構想段階であるため、具体的な内容についてまで触れることはできませんが、私は非常に楽しみにしています。キヤノンは多彩な機能を盛り込んだ商品をユーザー層別に造り分けることが得意なメーカーですが、ペンタックスは機能をシンプルに整理し、比較的少ない商品構成で幅広くユーザーの要求を充たしてきた伝統のあるメーカーです。そこにはメーカーとユーザーとの間で、プロ、アマに関係なく、カメラを道具として使いこなすため創意工夫し合ってきた喜びが受け継がれているように思えます。

歴史をさかのぼればキヤノンの前身となる精機光学研究所は、創業準備段階ではカメラの試作に当たった技術者が経営に深く関与していたものの、1933年の発足後は資本家やビジネス経験者が先頭に立って技術者を組織し、小さな町工場から言わば正攻法で成長を遂げたメーカーです。
ペンタックス(2002年以前は旭光学工業株式会社)は1952年に日本で初めて35mm判一眼レフカメラの商品化に成功し、独自に改良を重ねた末、その実用性の高さを世界中に実証して見せたメーカーとして知られています。その指揮を執ったのが、当時の社長だった故松本三郎さんでした。
松本さんは夜学へ通いながら、叔父が1919年に創業した旭光学工業合資会社(ペンタックスの前身)のレンズ研磨の現場で働き、様々な技術を身に付けました。やがて若くして会社経営を任され、1938年に旭光学工業株式会社を起こしましたが、敗戦の煽りで一時解散。会社復興の意欲を支えたのが、趣味だった写真を撮るためのカメラを自ら開発したいという、強い職人意識だったと伝えられています。かつて愛用したドイツ製のカメラを参考にしながらも、新たに招いた技術者の協力を得て完成させたのが、まったく独創的な一眼レフ、アサヒフレックスI型だったのです。
ペンタックス現社長の浦野文男さんも、私が大学1年の頃から愛用してきたLXの開発リーダーを務められてきた方です。社員の方にお尋ねするとよく、このカメラはベテランの職人が手間隙かけて手作業で組み立てなければならず、造れば造るほど赤字ですよという答えが返ってきたものですが、それでも1980年から21年間にわたって驚異的なロングセラーを記録しました。電池が切れても手動操作で撮影が続けられる、故障知らずのタフなカメラです。

独創的な職人集団と評されてきたペンタックスの企業風土は、オーダーメイドやカスタムメイドのノウハウが求められるビジネスソリューションの構築には元々高い適性を備えていると言えるでしょう。ともすると、自社製品を売らんがためのセット販売に終始するおそれもあるサービス形態ですが、使い手の身になって無駄を省き機能性を高めてこそのソリューションです。本格的なデジタル時代を迎え、ソフトウェアの開発やカスタマイズなども合わせてどのような展開を見せてくれるか、期待したいと思います。

一眼レフメーカーの本分

最後に、家電メーカーがデジタル一眼レフ市場へ参入したがる最近の傾向について、気になる点を一言。
価格低迷によるコンパクトデジタルカメラの不調を、より付加価値の高いデジタル一眼レフや交換レンズの収益で挽回したいという考えは、分からないでもありません。しかし本来、コンパクトデジカメ事業の営業上の問題は、より機能や使用目的が明確な魅力のある商品を考案するなどして、その中で解決を図っていくべきではないでしょうか。
デジタル一眼レフ事業による収益は、その関連システムをより社会に役立てるための技術開発や営業活動に投資していくのが、一眼レフメーカーの本分だと私は思います。

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2006年08月30日

一眼レフカメラという商売 (その1 家電メーカーの挑戦)

大手家電系メーカーが競い合うデジタル一眼レフ

2年に一度ドイツで開催される伝統の大イベント、映像機器展示会「フォトキナ」がひと月後に迫りました。今回最も動向が注目されているのは、やはりデジタル一眼レフでしょう。
今年は初めて世界的大手家電系メーカーが相次いでデジタル一眼レフ市場へ参入し、既存メーカーも巻き込んで競うように新製品の出品を予告しています。
各社とも、交換レンズの規格も含め開発には先発カメラメーカーの協力を得ていますが、いかにユーザーを開拓するかはそれぞれ独自の努力が必要とされるところです。
実はこれがなかなか難しい。かつて一眼レフカメラという商売に手を染め、優秀な人材、設備、技術の蓄積を持ちながら結局は失敗に終わったメーカーなど、世界中にいくらでもあるのです。

家電メーカーの多くは、これまでにもビデオカメラなどの製造、販売では十分な経験を積んでいます。しかし、一眼レフ市場にはその経験を活かしにくい特殊な事情が潜んでいることを、はたしてどれほどのメーカーが認識しているのでしょうか。どちらの市場も製品が業務用と民生用とに大きく分けられる点は同じですが、ビデオカメラでのセオリーは、一眼レフにはそう簡単には通用しないところがあるのです。
ビデオカメラの場合、テレビ放送などの業務用と一般アマチュア向けの民生用とでは、その価格、性能、操作方法には相当大きな隔たりがあります。一方、デジタル一眼レフの場合は7、8年前こそ300万円前後はするような報道、広告制作向けの業務用しかなかったのですが、コストダウンや使い勝手の向上から、今はプロ用機のユーザーもハイアマチュアが多くを占めるようになりました。逆に、飛躍的に性能の良くなった中級機がプロの間でも認められ、仕事に使われる機会も増えています。業務用か民生用かは、ビデオカメラ市場では実情に即したものですが、デジタル一眼レフ市場ではもはや抽象的な概念、もしくは便宜上の分類でしかなくなってきているのです。
プロ向けの製品でアマチュアに精一杯ファンサービスし、アマチュア向け製品でプロのさまざまな要求にまで応えなければならないという矛盾。自社の顧客を需要の多い一般アマチュアのみと割り切り、一眼レフをホームビデオカメラと同じような娯楽商品だと錯覚すると、とんだ見当違いの事業展開をしてしまう恐れがあるのです。常識的な経営者や技術者、営業マンなら頭がおかしくなってしまいそうな世界ですが、かつてのフィルムカメラ時代の一眼レフ市場では、こうした傾向はもっと極端なものでした。
これまで一眼レフで成功できなかったメーカーの多くは、それを余力でこなせそうな手堅い副業(語弊のある言い方ですが、閑散期の道楽仕事)として位置付けてしまったところに、考えの甘さがあったのではないでしょうか。

キヤノンが示すデジタル一眼レフのビジネスモデル

IT関連の営業マンからよく、「ビジネスソリューション」という言葉を聞くようになりました。単に注文された製品を売るだけでなく、顧客が抱える業務上の問題点を解決し生産性が高められるよう、必要なものがすべて揃った最適なシステムを構築し、納品後も継続的にサポートするサービス形態を指すようです。「ソリューション」には「解明」とか「解決法」といった意味があります。

映像技術のデジタル化と各種産業のIT化とが相乗効果になり、不況が長引いたにもかかわらず、カメラ市場は年々拡大してきました。カメラメーカーとしてテレビカメラやOA機器の製造販売で家電メーカーに引けをとらないキヤノンは、早くからビジネスソリューションの考え方を営業戦略に取り入れ、売上げを伸ばしてきました。

 キヤノン(株):ソリューション
  加工型製造業向け IPモニタリングシステム

その経験から、プリンターやソフトウェアの分野でも高い開発力を持つキヤノンは、デジタル一眼レフにこれらを組み合わせ、他社に先駆けてフォトビジネス界へのソリューション提供を始めています。

 キヤノン(株):フォトスタジオ向けソリューション
  新しいデジタルフォトスタジオのソリューション

フォトスタジオ向けソリューションの例では、照明機材を扱う商社など異業種との協業も積極的に進め、これまで顧客の側では雑然として利用しにくかったアフターサービス窓口の一本化まで目指しています。
スタジオ関係者対象のデジタルフォトセミナーの開催も積極的で、このブログの8月14日付記事で紹介したオンデマンド印刷会社(株)アスカネット主催のデジタルフォトセミナーにも、キヤノンは全面的に協力しています。
こうした営業戦略を展開するため、キヤノンでは数年前からデジタル化時代のフォトビジネスの体系的な分類に取り組み、デジタル一眼レフの商品構成をそれぞれの用途に特化したものに再編成してきました。同時に、それらの開発速度を上げるために実践した主要部品の純正化、純国産化の徹底ぶりにも、目を見張るものがあります。
現行製品は5機種ありますが、ファミリー向けは1機種に絞り、実に上位4機種までが広告制作、報道、写真館、雑誌出版など各分野のプロカメラマンの要求に十分応じられる性能を充たし、妥当な価格設定で供給されているのです。
今人気の子ども写真館でキヤノンのデジタル一眼レフが使われれば、一般家庭への高い宣伝効果が期待できるでしょう。また、ワールドカップやオリンピックなどのテレビ中継で映される報道陣が揃ってキヤノンのデジタル一眼レフを構えていれば、ハイアマチュアの購買意欲を掻き立てるに違いありません。

家電メーカーにとってはぜひお手本にしたいビジネスモデルですが、決して陥ってはいけない落とし穴に気をつける必要があります。それは、売り上げという表面的な数字に囚われてはならないということです。
一眼レフ関連商品のうち、ビジネス用途での購入は全売上げの何パーセントか? また、そのような購入層への商品開発や営業活動にどの程度コストがかかり、どの程度全体の利益向上に貢献できたのか?
仮にその成績が思わしくなかった場合、株主、経営陣、技術や営業の担当部署、労組を中心とする従業員などとの間でお互いに批判や不満が噴出するようであっては、とても事業は長続きしません。一眼レフという商売は、ときに社内事情をこじらせやすい要素を孕むこともあるのです。

社会に対し、一眼レフシステムを提供することでどのような貢献がしたいのか、そのデジタル化でどのようなサービスを実現したいのか。よほど明確なビジョンや強い使命感を示せる企業風土が作れない限り、メーカーが一眼レフ事業に対するモチベーション(自発的な動機付け)を維持していくことは、決して容易ではないのです。

〔続く〕

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2006年08月23日

ペンタックス「K」シリーズとの出逢い (その2)

〔(その1)へもどる〕

一眼レフカメラのデザイン考 -プロ用として、あるいは商品として-

ニコンとキヤノン。
数々のプロ用一眼レフカメラを世に送り出し、宿命のライバル同士と評されてきた2大メーカーです。
両者には共通点があります。それは一眼レフのカメラデザインにおいて、車のデザインでも世界的に評価の高い一流デザイナーの指導を、長年にわたって受けてきたということです。

ジュージアーロのモチーフを取り入れたニコン製品は、曲面を複雑に組み合わせた中にも随所に鋭角的なエッジを配し、悪路に強い機動力のあるレーシングマシンのような印象を感じさせます。
一方、ルイジコラーニのコンセプトを取り入れたキヤノン製品は、優美な流線型のフォルムで全体を大きくゆったりと包み、都会的で洗練されたスポーツカーのような印象を感じさせます。
どちらも男性的なスピード感溢れる車を連想させる、という点では同じで、ゴールを目指しアクセルを噴かすドライバーの姿が、貪欲に被写体を追い続けるプロカメラマンのイメージとも重なるようです。
さらに操作部のレイアウトについても人間工学に基づいた配慮が成され、それが功を奏して、外観から受けるスピード感を一層リアルなものにすることに成功しているのかもしれません(実際はどうあれ)。
そのようなデザインをプロ用機から下位機種まで一貫して採用することで、一般消費者の購買意欲を煽ろうという営業戦略上の演出なのでしょう。

さて、ペンタックスです。
学校アルバム関係の撮影では、この春にデジタルへ移行して以来ニコンD200をメインに使っていますが、それ以前はペンタックスLXを中心に、同社のZ-1やMZ-5を目的に応じ組み合わせて使っていました。
LXは私にとって大学入学当初から20年以上使い込んできた馴染み深いカメラです。そして、35ミリ判一眼レフカメラではペンタックスが唯一、プロ用として特別に高い品質基準で設計、製造したカメラです。
その操作部はロングセラー機であるSPやKMのレイアウトを踏襲していますが、デザイン上の工夫は各部の形状や寸法、操作感などを徹底的に見直し使いやすく改良するという、極普通で当たり前のものでした。外観は決して安っぽさを感じさせませんが、かといって実際の値段ほど高そうに見えるものでもありません。
Z-1はオートフォーカスの中堅一眼レフですが、LXとは少し趣が違い、ニコンやキヤノンが作り出すデザインの流行をやや意識したような印象を感じさせます。それが、後のMZ-5では再びLXに準じたデザインにもどり、かつ一層のコンパクト化が図られました。
ペンタックス最初のデジタル一眼レフ、*istDのデザインは、MZ-5のフォルムをベースにZ-1の操作系をラップさせた折衷案で、その意匠は先月発売されたK100Dにも踏襲されています。

一眼レフカメラのデザイン考 -子供を撮るために-

K100Dについて、ペンタックスの商品企画担当の畳家久志さんはアスキーのインタビューに応え、その用途を「子供を撮ること」、それも「学校などでのステージ上のイベント」に絞り込んだとお話しされています。

 「ASCII24」:2006年8月21日付ニュース
  【INTERVIEW】ペンタックス『K100D』開発陣に聞く(後編)

私はK100Dの発表を受け、このブログの5月30日付記事でも、「手ぶれ補正というと初心者向けの機能のような印象もありますが、ストロボ(フラッシュ)や三脚を使いにくい状況での撮影では、プロも助けられる機能です。私の場合、学校アルバム用の撮影依頼を受ける機会が多いのですが、学園祭などのステージ発表や式典の撮影など、大口径レンズと組合せてその威力が試せる場面はいろいろ考えられそうです」とコメントしたのですが、まさにそれは畳家さんたちが意図した通りの使い道だったのです。

K100Dは、その機能とコンパクトさ、手頃な価格から、ファミリー層もユーザーターゲットに含まれることは容易に想像できました。
しかしそのデザインは、これまでの同社や他社から発売されてきたファミリー向け一眼レフとは、少し雰囲気が違います。
ニコンやキヤノンの製品でさえ、このジャンルのいわゆる“パパママカメラ”は、もっとフレンドリーで愛らしい雰囲気の漂うデザインが多く見られました。
シリーズのネーミングも「Kiss」(キヤノン)、「Sweet」(旧コニカミノルタ)など母性的でアットホームなイメージにした方が消費者の覚えも良かったようです。
ところが、このK100Dのすべてに通じる中性的な生真面目さはどうでしょう。
「子供を撮ること」、それも「学校などでのステージ上のイベント」、すなわち家庭や旅行先などプライベートな場ではなく、学校という公の場で我が子を撮るということ。
子供にとっては、地域社会の一員として記念写真の中に自分の姿が納まることを、否応なく意識させられる場面です。ある子は誇らしげに、またある子は少しはにかみながら。
そして、親としては冷たく澄んだレンズを通して、ストイックな大人の視線で、我が子の成長を見つめなければいけない瞬間でもあります。
“オフィシャルなファミリーカメラ”。そのコンセプトが見えてきたとき、K100Dのデザインも自然と今のかたちに決まっていったのかもしれませんね。

畳家さんやK100Dの開発に携わった方々のお話しが、プロ写真家の谷口泉さんのブログにも紹介されています。ぜひご覧になってください。

 PENTAX「美写華写ブログ」:2006年8月22日付記事
  圧倒的な売れ行きのK100D、どこが評価されたのか?(2)

カメラのデザインが決める子供との距離

学校アルバム関係の撮影の仕事というのは、生徒さんたちとのコミュニケーション、言い換えれば距離のとり方がなかなか難しいところがあります。
例えば校外活動のスナップでも公式の記録に残す写真ですから、いくらその場が楽しいからといって馴れ合いは禁物です。とはいえ、生徒さんから見れば引率の先生方も添乗のカメラマンも同じ大人の保護者ですから(ときどき私まで「せんせー(笑)」と呼ばれてしまうことがあります)、他人行儀では思い出に残るような心の通った写真は撮れません。
ここで私は、最近はっきりと気が付いたことを打ち明けなければなりません。それは、ニコンD200のようなヘビーユースを意識したデザインのカメラは、生徒さんたちとの距離をどうも遠ざけてしまうようだ、ということです。そして改めて思い出されるのが、LXをメインに使っていたときいつも見せてくれた彼らの真顔、それと自然な笑顔です。
悲惨な事件を報じる際のマスコミの無遠慮な取材姿勢が問われて久しいのですが、テレビニュースに映る殺気立った報道陣のカメラの列が、同じデザインの流れを汲むカメラにも生徒さんたちの目にはだぶって見えてしまうのかもしれません。私は今、自分の使用するカメラが相手に何か威圧感のようなものを与えてはいないか、精神衛生上十分に配慮する必要があると感じているところです。

私は生徒さんたちの前で、「貪欲に被写体を追い続けるプロカメラマン」になるより、ひとりの「ストイックな大人」でありたいと思っています。そもそも、いくらカメラを振り回しガツガツ被写体を追いかけたところで、写真というのはシャッターを切った瞬間しか、後世に残すことはできないのですから。

 「for your precious moments =あなたの大切で貴重な瞬間のために」
 by PENTAX

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ペンタックス「K」シリーズとの出逢い (その1)

30年前に「欲しい」と思った一眼レフ

小さい子供のときからカメラを持たせて欲しくてたまらなかった私が、ようやく父から拝借を許されたのは、小学5年生になった年。今はもう無くなったメーカーですが、Y社が発売したコンパクト機でした。今から30年前のことです。
嬉しかったですね。嬉しかったのですけど、レンズ交換ができない。なぜ? 子供心にもどうしてか納得できずにいました。

その疑問が解けたのは、その年の初夏の移動教室で、群馬県の榛名山を訪れていたときのこと。ハイキングの休憩中に、他のクラスの担任だった若い男の先生が、群がった男の子たちの前で最近買ったばかりらしいカメラから自慢げにレンズを外して見せていたのです。
「ほら、ここにミラーがあって、スクリーンに構図が映るようになっているだろ。それを、この中のプリズムで正確に見ることができるんだ」
たまらずに私も見入りました。
「だから、レンズを換えても実際に写る写真と同じ構図が見られるというわけ。ま、君たちが持つにはまだ早過ぎるけどね」
感心して見とれる生徒たちの目も、いつしかその先生への尊敬の眼差しに。
渋く銀色に輝くパーツに、いかにも精巧そうな造り。冷たく澄んだレンズと、どこかストイックで大人っぽい理知的な雰囲気。男の子なら誰もが一度は憧れる、精密光学機器の極致がそこにはあったのです。
(これだ! 絶対に欲しい…。)
私が一眼レフカメラの存在を初めて意識した瞬間でした。
あとで知ったことですが、その先生のカメラは当時発売されて間もない高級一眼レフでした。O社が開発したその製品は今見ても際立ったコンパクト設計で、豊富なアクセサリー群とともに発表されるや一躍脚光を浴びていたのです。

後日、その高級一眼レフで撮られたたくさんのスナップが廊下に貼り出されました。いつの間に撮られたのか、生徒たちの無防備な寝相のスクープ写真!
ところが、秋には教え子たちからその撮影シーンを学芸会で暴露され? 保護者の皆さんはクスクス笑っていたみたいですが。

ペンタックスにしなさい

それから約1年。中学校進学を控えていた私は、各社のカメラカタログの比較に余念がありませんでした。父も援助してくれるというので、貯金を卸していよいよ自分の一眼レフを買うことにしたのです。
O社の一眼レフはやはり魅力的でしたが、ほかにペンタックスからも後を追うようにコンパクト設計の一眼レフが発売されていることを知り、その技術力に惹かれ始めていました。
「そんなに毎日毎日眺めて、そのうち穴があいちゃうよ」
呆れた父が決めかねている私に言ったアドバイスは、
「ペンタックスにしなさい」
「どうして?」
「O社は頻繁に目新しい製品を出すけど、移り気で大抵は長く続かないから。ペンタックスの方が伝統を大切にしていると思うよ」
そして私は、学生服の注文に行った帰り、両親と共に立ち寄ったカメラ屋で、アサヒペンタックスKMという生涯最初の一眼レフカメラを手に入れたのでした。
お目当ての最新型の方は、結局予算オーバー。それに比べるとちょっと大柄でしたが、KMは1960年代にロングセラーを誇った銘機SPのメカニズムを継承する、プレーンで使いやすい入門機でした。デジタル一眼レフ時代を迎えた今、なお開発が続けられているKマウントシステムを採用した最初の製品です。1975年の発売後、翌年には機能の一部が省略され一層プレーンさを増した輸出向けのK1000も登場し、それはSPを凌ぐロングセラーになりました。

卒業式が済み、春休みを迎え、初めてKMを携え親友(今もネット仲間です)と2人で遠出したのが、奇しくも今住んでいる小川町でした。そのときの写真はもう、引越しのときにどこかへ仕舞い込んで行方不明になったままですが、カメラの方は故障らしい故障もせず、今も思い出の品として私の手元で動態保存してあります(外観は相当くたびれていますけど)。

〔続く〕

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2006年08月22日

究極の画像調整ソフト「SILKYPIX Developer Studio 3.0 Beta」公開

救世主降臨! JPEG画像がRAWファイルのように調整できる

「デジカメで撮ったらどうも色がおかしい」
「いくらレタッチしても直らない」

同じシーンを撮った写真なのに、カットによって赤味や青味が強かったりと、色調がバラバラになってしまうことがデジタル撮影ではよくありますよね。
その多くは、オートホワイトバランス機構の調整誤差が原因だと思われます。
これを後から修復するのに、プリンタドライバでの調整、「Adobe Photoshop」等のレタッチソフトでの調整、などといった手段があります。
ところが、画面の明るいところから暗いところまで全体をバランス良く修復するのは難しく、これには専門家でも相当の苦労を強いられているようです。
まして一般ユーザーには、レッド、グリーン、ブルー、イエロー、マゼンタ、シアンの各色を、何でどう調性すれば修復したい色調に近付けられるのか、その方向を見つけることさえ困難です。

昨日、救世主とも呼べる画期的な画像調整ソフト「SILKYPIX Developer Studio 3.0 Beta」が(株)市川ソフトラボラトリーから公開されました。30日間、誰でも無料で全機能を試用できます(9月30日までの期間制限あり)。

 「デジカメWatch」:2006年8月22日付記事
  市川ソフト、SILKYPIX 3.0 β版を公開

ホワイトバランスを、青から赤(アンバー)へのスライダー移動だけで手早く広範囲に調整できるほか、グリーンやマゼンタの色被りも同様の操作で簡単に取り除けるのが特徴です。しかも、自動調整を試みた後に手動で何度でもその調整量を変更することが可能。いずれも「Adobe Photoshop」ではできない芸当です。もちろん、スキャナーで読み込んだ画像も美しく自然に調整できます。

 SILKYPIX Developer Studio 3.0 Betaの公開について

本ソフトは、上記の公式サイトからダウンロードできます。
ただし、まだ製品になる前のBeta版なので動作の正確さは保証されていません。必ず調整するファイルのバックアップを取ってから、モニターとして試用してください。疑問点や意見などはモニター専用掲示板で受け付けています。
製品版の発売は9月下旬予定とのこと。

掲示板を覗いてみると、早速全国のモニターから続々と不具合報告が。
でも、本当に夢のような良いソフトができました。元々は、主に高機能デジタルカメラに装備されているRAWモードで撮影したファイルを管理、調整、現像(画像ファイルへの変換)するためのソフトだったのですが、今回のバージョンアップでJPEGやTIFFなどの画像ファイルも調整できるようになったのです。
種を明かせば、これは「JPEGやTIFFのイメージ画像をRAWデータとして処理することが可能な「SILKYPIX RAW Bridge(シルキーピックス ロウ ブリッジ)」を開発」した市川ソフトラボラトリーだからこそ成せる業。おそらく、一般的な市販ソフトとしては世界初の快挙でしょう。こんなことが、できたんですね。日本人に生まれて良かった!(英語版も製品化されると思いますが。)

もう使い分けの必要はなくなる? 限りなく万能に近い画像調整ソフト

当然のことながらJPEGのような画像ファイルの調整は、豊富な情報を含んだRAWファイルの調整に比べれば自由度の高さでは及びません。しかし、両者が同じソフトの同じ機能(一部RAW専用)で同じ操作により調整できることなど、これまでとても考えられないことでした。しかも、レタッチソフトと違い、大幅な調整を加えても画像劣化が極めて少なく済むのも嬉しい話です。陰を明るく調整してハイライトが白く飛んでしまうような場合でも、ハイライトコントロール機能の各種調整で復元することもできます。
さらにこのソフトは、ファイルブラウザとしての管理機能やビュアーとしての閲覧機能、印刷機能をも兼ね備えています。フォルダ内のファイル一覧を表示した状態で選択ファイルに調整を加えていくこともできるので、作業がとてもはかどります。特に便利なのが、作業を中断してもパラメータ(調整値)を自動的にファイル化して、同じフォルダ内に保存してくれる点です。再びソフトを立ち上げ調整途中のファイルを開くと、そのパラメータも自動的に読み込まれ、直ちに作業を再開することができるのです。つまり、元のファイルに何ら手を加えることなく、何度でも試行錯誤ができるというわけです。業務用としては、クライアントさんとのディスカッションなどにも最適なソフトだと言えるでしょう。
なお、各種調整や画像ファイル出力の際、選択した複数ファイルを一括処理する機能も備わっています。

専用掲示板での担当者コメントによると、画面上の小さな不要物を取り除く機能も、目下開発中とのことです。合成やフィルターワーク、ブラシツールによるレタッチなどの機能は「Adobe Photoshop」等に譲りますが、ほとんどの作業は、この「SILKYPIX Developer Studio 3.0」があれば済んでしまいそうですね。現行バージョンの新型カメラのRAWファイル対応は極めて早く、その点では新バージョンも期待を裏切らないことでしょう。製品版の登場が楽しみです。

いや、しかし、それにしても、凄いなぁ。。。

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2006年08月20日

能ある鷹? ペンタックスK100Dに隠された爪

15年前に見せた「Kマウント」の進化。しかし…。

ペンタックスは1991年に、当時としては画期的な交換レンズシステムを発表し、対応する新型一眼レフ、Z-1、Z-10とともに発売しました。
KAF2マウントと命名されたそのシステムは、カメラとレンズとをつなぎ合わせるマウント内部に、新たに電気接点を設けたところに特徴がありました。
これにより、新開発のパワーズーム(電動ズーム)レンズ内の駆動用モーターへ、カメラ側の電池から電源供給できるようになったのです。
しかし、メーカーが力を入れた割にユーザーからは評価されず、いつの間にか新製品には従来通りの手動ズームレンズしか登場しなくなってしまいました。そして2003年に発売された待望のデジタル一眼レフ、*istD以降は、とうとう旧システムのKAFマウントへ先祖がえりし、パワーズーム用の電源供給接点は廃止されてしまったのです。

実は私もZ-1を発売と同時に購入し、その後中古で買い増しした僚機とともに、ほとんど故障知らずで今も仕事に使っています。もちろん、試験的に購入したパワーズームレンズも現役ですが、結局手動ズームに切り替えた方が構図の微調整もしやすく、ついぞ電動は使わずじまいのままです。
今、ペンタックスの公式サイトで調べると、往時のパワーズームレンズはすべて販売終了とされています。不評に終わった製品が消えて行くのは仕方ないことですが、電源供給接点はパワーズーム以外にも応用できる可能性があったため、その廃止を惜しむ長年のユーザーが少なくなかったことも事実です。私も、その一人でした。

今再び宣言された「Kマウント」の進化。それは…?

ペンタックス上級執行役員の鳥越興さんが、この春米国で開催された「PMA」ショーでImpress Watchのインタビューに応じ、今後の新製品の展望について回答されています。その内容は、長らく変化の見られなかった同社の交換レンズシステムに新たな夜明けが近いことを、突如宣言するものでした。

「現在、開発陣に指示しているのはKマウントの進化です。〔中略〕上位互換の形で、より高機能なマウントシステムへと進化させることに、現在は取り組んでいます」

 「デジカメWatch」:2006年2月27日付記事より抜粋
  【インタビュー】デジタル一眼に必要な要素のすべてに取り組む
  ペンタックス上級執行役員イメージングシステム事業本部長 鳥越興氏

先月発売のK100Dでは見送られましたが、上の記事中にモックアップの写真が掲載されている1000万画素機には採用されるのでしょうか。ペンタックスの3月22日付ニュースリリースでは「2006年秋頃に発売予定 」とされています。9月下旬にはドイツで写真関連の国際見本市「フォトキナ」が開かれますから、その頃までには詳細が発表されるのかもしれません。

見逃せないK100Dに隠された爪

ところが、その発表を待つまでもありませんでした。伏線はすでに、K100Dの中に敷かれていたのです。
“電源供給接点”復活の礎(いしずえ)。
ダミーのパーツで塞がれてこそいますが、良く確かめるとマウントの内側、ミラーボックス下部のZ-1と同じ位置に、接点取り付け用の孔が予め用意されているではないですか。
ひと月近くも気付かずにいた自分が情けないです。このことは、ペンタックスのファン同士が情報交換に利用している某サイトの掲示板を見て、初めて知ったのでした。
K100Dのミラーボックスは、手ぶれ補正機構搭載に合わせて新規設計されたものです。今後の新製品では同じミラーボックスが、ダミーパーツではなく本物の電源供給接点を装着した状態で実装されるのでしょう。おそらく。
こちらの外観写真では試作機のためか判別できません。店頭デモ機などでお確かめください。ただし、勝手にレンズを外すと店員さんに叱られるお店もあるのでご注意ください。できれば、ご自身でお買い求めください。)

パワーズーム復活なるか? それとも…。

かつてユーザーに認められなかったパワーズームがなぜ、今になって復活の兆しを見せているのでしょうか。
当時はデジタルカメラはもちろん、パソコンさえ一般消費者の間には普及していない時代でした。ペンタックスの試みは、時代を先取りし過ぎていたのかもしれません。
ペンタックス最初のデジタル一眼レフ、*istDには、パソコンからリモートコントロール撮影するためのソフト、「PENTAX REMOTE Assistant Ver. 1.01」が無償で用意されていました。その後このソフトの開発は止まったままですが、私は今、あるいは次期バージョンでズーミングのリモートコントロールもできるようになるのではないかと、密かな期待を抱いています。K100Dにはペンタックス独自の「デジタルプレビュー」というテスト撮影機能が備わっていますが、これからはその結果をパソコンへ転送し、モニターを見ながら構図が調節できるようになるというわけです。三脚撮影なら手ぶれの心配はないので、その補正のためのイメージセンサーのシフト機構を構図の微調整に応用できるかもしれませんね。
ここで、さらに期待したいことがあります。それは、他社では最早主流となりつつある、レンズ内モーター駆動方式のオートフォーカス機構の採用です。
ペンタックスはこれまで一貫してカメラ側モーター駆動方式を用いてきました。この方式はレンズの小型化やコストダウンには有利なのですが、合焦速度を上げるには限界がある、と言われています。一概に比較はできませんが、望遠系のレンズでは確かに差が開くようです。

今、ペンタックスの交換レンズ群はモデルチェンジの過渡期を迎え、往年の人気レンズが次々と市場から姿を消しています。果してそれがどのような形で復活してくるのか、KAF2を発展させたKAF3マウントは現れるのか、早く真相が知りたくてワクワクしているところです。

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2006年08月14日

オンデマンド印刷でリーズナブルな写真集を作りましょう

デジタルフォトセミナーを受講しました

先週末、東京の大手町で(株)アスカネット主催のデジタルフォトセミナーが、営業写真館関係者向けに開催されました。私も日頃お世話になっている越生町の(有)山口写真の紹介で、フォトグラファーとして受講させていただきました。
同社は1冊から作れる写真集「マイブック」「プロフォトブック」などのネット受注サービスを次々展開し、注目を集めています。会場にも展示コーナーが設けられ、「プロフォトブック」の様々な作例を手に取って確かめることができました。

目覚ましいオンデマンド印刷の進歩

これら写真集は高性能オンデマンド印刷機で網点印刷され、丈夫なハードカバーを付けて丁寧に製本されます。その品質は書店で売られている写真集と比べても、何ら遜色はありません。しかも、1ページ当たりの単価はインクジェットプリント並みに安く抑えられているのです(「マイブック」の場合)。光ブロードバンド環境があれば自宅でデータを編集し、スピーディにネットで発注することができます。

私が都内の出版社に勤務していた5年ほど前、編集部内のオンデマンド印刷機への認識はまだ、オフセット印刷機の代用品という程度のものでした。社内に数台しかないパソコンは主に事務処理用で、ネット環境はナローバンド。私は自主的に自分のノートパソコンとようやくポータブル化されたMOドライブを持ち込み、ワープロソフトによる図表や表紙等の版下制作を自己流で始めたところでした。プロ用デジタル一眼レフもニコンD1Xが実勢価格50万円を切り、自分にも何とか購入できたのもこの頃です。
それにしても、たった5年です。世の中こうも状況が変わってしまうものかと、本当に驚かされました。出版も、写真産業も、ビジネススタイルが大きく変わりつつあることを強く実感させられました。

いよいよ存続が危ぶまれる銀塩写真

展示コーナーで、アスカネットの営業の方に質問してみました。
「このような写真集を銀塩印画紙で作るサービスも見ますが、これからはオンデマンド印刷とどちらが主流になるのでしょう」
「銀塩は今、現像液の廃液処理が大変なんです。需要が減って、回収業者が次々に事業を縮小しています。もう印刷にしか頼れません」
また、セミナーの講師として招かれたSkip Cohen氏によると、アメリカ国内のプロのデジタルカメラの使用率は約75%に達しているそうです。そして、
「アメリカではすでにフィルムは死んだ」
とコメントしました。
私はそのときまで、フィルムも銀塩印画紙も、需要があれば細々とでも生産は続けられるだろうと楽観視していました。しかし、肝心の現像サービスの方が、先に事業として成り立たなくなりつつあるというのです。今や世界中に普及した店頭プリント用のミニラボマシーンも、いつまで薬品関係のメンテナンスが受けられるか店主にとっても不安は尽きない、という話も後日耳にしました。写真プリントの主流は、確実に銀塩からインク方式へ変わろうとしているようです。

写真館のデジタル化とその新しい役割り

プロのフォトグラファーの間では、撮影のデジタル化はまず速報性が求められる報道分野から始まり、次いでCGデザイナーとの協業が多いコマーシャル分野、両者の性格を含む雑誌などの出版分野へと広がっていきました。その中にあって営業写真館は、最もデジタル化が進んでいない分野かもしれません。その必要に迫られることが少ないうえ、逆にフィルムで撮ることをセールスポイントにしている経営者が少なくないことも背景にあるでしょう。
しかし埼玉県内の写真館では、デジタルフォトの勉強熱は年々高まってきています。ソフトが進歩し、多様な画像修正が可能になってきたからです。最初の頃はフィルムで撮影し業者へ頼んでデジタルデータ化してもらっていたところも、時間と費用がかかるため、次第に安くなったデジタルカメラを使い始めています。そして、それを当然と思うお客さんも増えてきました。
写真館経営者の新しい悩みは、撮った写真のデータの保管をどうするか、ということです。そのために必要な設備が思いのほか高いのに、これまで再プリントの注文に来るお客さんはほとんどいなかったという前例が、更なる投資を思いとどまらせているのです。せっかく著作権は写真館に帰属するのですから、その豊富な資産を再利用できる良いアイディアが望まれているのです。
そこで期待されるのが、先に紹介したようなオンデマンド印刷による写真集制作サービスです。シンプルなものは家庭からも注文できますが、人生の記念になるようなフォーマルなものは制作工程が複雑で、業者と契約のあるプロ専用のサービスになります。お客さんにとっては出産、誕生日、七五三、入園・入学式、卒業式、成人式、結婚式と、たくさんのイベントを写真館で撮って本にしてもらい、預けたデータを再編集して1冊の名場面集に作り直してもらう、といったこともできます。写真館にとってもリピーターの獲得につながり、設備投資に前向きになれます。ほかにも文集や画集、陶芸や手芸、木工などの作品集作りなど様々な営業品目の広がりが考えられますから、デジタルフォトの勉強にも益々意欲が沸いてくる、というわけです。

子ども写真館のようなチェーン店はどうか

子ども写真館のような全国規模のチェーン店では、店舗にもよりますが比較的早く撮影のデジタル化が進みました。撮ってすぐモニターで見られるサービスが、お客さんに喜ばれるからです。ただ、各店のWEBサイトを見ても、撮影後のネガやデータの保管方針についてはほとんど触れられていません。また、基本的に子ども専用なので、人生の記録は成人式が上限。以降の撮影は、保護者になられてからお子さまやお孫さんの同伴でお近くのチェーン店をご利用ください、といったスタンスです。ビジネスとしては、これで成功なのかもしれません。
ローカル規模のチェーン店なら、もっと良心的です。私が生まれ育った東京都板橋区赤塚新町に本社を構える(株)写真館ピノキオは都内中心のチェーン店ですが、ネガの保管体制や考え方をはっきりとWEBサイト上に明記しています。また、生涯を通じて利用されることも歓迎しています。そのため、店舗名は子ども向きでもキャッチコピーは「ファミリー写真館」です。第1号店の光が丘店開店は私が小川町へ越してきた後なので、お世話になる機会がなかったのは残念です。

大切にしたい、地域の写真館との絆

転勤などで引越しの多い家庭には、全国規模の写真館チェーン店も頼れる存在になり得るでしょう。そのためにも、撮影後の写真や顧客情報のデータ管理体制を万全に整え、全国ネットで大切な思い出づくりをサポートして欲しいものだと思います。ただしそのようなサービス維持にはコストがかかりますから、妥当な料金内で撮影のクオリティにも高い水準を求めるには、ある程度限界があっても仕方ないのかもしれません。
ここで改めて見直したいのが、個人経営の写真館です。地域密着型ですから店主はお得意さんの生い立ちはきちんと覚えてくれていますし、出張撮影にも応じる店が多いので好みの場所で撮ってもらうこともできます。写真集作りが前提なら、こうしたフィールド撮影のノウハウもチェックポイントですね。大概はお薦めのロケ地も熟知してることでしょう。

いつからでしょうか。児童虐待事件や年少者が引き起こす深刻な事件…。一見平穏な日常社会の中で、そういった悲惨なニュースが報じられない日はもう、ほとんどなくなりました。
かつてどの家庭でも写真は「御写真」と丁寧に呼ばれ、家族一人ひとりや友人、知人、親戚との絆を結ぶ共有財産として、今より大切に扱われていたように思います。だからカメラもその家の精神的な財産で、躾として子どもは成長するまでみだりに触れてよいものではありませんでした。そして写真館で記念写真を撮ってもらうというのも、そのこと自体が家族にとって神聖な儀式を意味しているかのようでした。篠田正浩監督の映画『瀬戸内ムーンライト・セレナーデ』(阿久悠 原作)の冒頭で、主人公の少年の一家が土地の写真師(写真館のフォトグラファーの古い呼び方)の大きな木製写真機の前に立ち、戦死した兄の遺骨(本当は…?)と一緒に記念写真を撮ってもらうシーンは、そんな昔の家族像を象徴しているようで深く印象に残っています。
自分の撮った誰かの晴れ姿が、事件の被害者や加害者としてニュースで流れたとき、報道の役に立てたと思う写真館のフォトグラファーはいないはずです。ただただ、自分の無力さを感じるだけでしょう。
ネガも写真のデータファイルも、そこに写されたお客さんとの再会が祝福される日を待っているのです。そのための機会を創造して行くことが写真館のこれからの大切な使命になるなら、その関係の仕事を依頼される身としても、幸せに生きていけるのではないかと思っています。

 画題:『祇園祭の裏通り』
 埼玉県比企郡小川町小川にて
 2006年7月30日撮影
 Camera:PENTAX K100D
 Lens:SMC PENTAX-FA☆ 85mmF1.4[IF]

夕暮れ時の南裏通りで、ふる里の山、笠山を背景に。
八和田小学校に通う姪のNAOちゃんです。
叔父馬鹿写真でゴメンナサイ。。。

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2006年08月10日

ニコンもペンタックスもRAW対応ソフトは発育盛り

今日は朝から台風一過の青空が広がり、焼け付くような暑~い一日になりました。最早クーラー無しにパソコンの前には座れません。大容量UPS(無停電電源装置)が新入り早々、いい仕事、しています。

大めし喰らいのニコン純正「Capture NX (Ver.1.0)」

ニコンD1XやD1Hを使っていた頃は「Nikon Capture Editor (Ver.2~3.5.3)」でRAWファイルの調整や現像(画像出力)をしていましたが、新型のD200はサポートされていないため、代わりに「Adobe Photoshop CS2(Camera Raw 3.3)」を使ってきました。「Camera Raw 3.3」は「Photoshop CS2」上で各社製品のRAWファイルをまとめて手早く画像処理したいとき実に有用で、時短による労働環境改善と人件費削減に(多分)大きく貢献してくれます(道理で10万円はするわけです)。しかし新機種RAWファイルへの対応は年に4回程度なので、そのタイミングがD80の発売に間に合うかどうかは分かりません。調整機能や出力画像のクオリティも「必要にして十分」という程度のレベルなので、そうなるとつまり、何か物足りなくなるようなこともこの先あるかもしれません。
そこで、準備も兼ねて7月28日に発売されたばかりのニコン純正RAW対応ソフト、「Capture NX (Ver.1.0)」を購入し、早速機能や動作を確かめてみました。

ところが、私の受けた第一印象はまず、「ちょっと重いな」ということです。評判どおり行かないのもそのはず。私のメインパソコン(Windows XP)のマシンスペックはCPUがCeleron 2.4GHz、メモリが1.0GBなのに、「Capture NX」の推奨環境はCPUがPentium4 2.0GHz相当以上、メモリが1.0GB以上なのですから。キャッシュファイルも数10MBと大きなものがいくつも生成されるので、できればキャッシュフォルダ用に別ドライブを増設し、環境設定の変更で移動させたいところです。なかなかの大めし喰らいですね。D80のユーザー層がファミリーや一般アマチュアと想定するなら、もう少し低いマシンスペックでも使えるソフトを、ニコンにはサポートしてもらえたらと思います。同梱の「PictureProject」には今のところRAW調整機能がなく、JPEGやTIFF等への単純な変換しかできませんので。なお、旧バージョンの「Nikon Capture Editor (Ver.3.5.3)」の推奨環境は、CPUがPentium 300MHz 以上、メモリが256MB以上でした。
しかし機能は充実しています。RAW調整に限らずスキャナで取り込んだ画像の調整も色々とできるので、カメラユーザー以外の方にもお薦めです。RAW調整以外ならパソコンにもそれほど負担はかかりません。13,320 円(税込)という ダウンロード販売価格は「Photoshop CS2」よりはるかに安く、私は魅力を感じました。ただ、あえて難を言うなら、これもD200のメニュー画面操作に似て、重要な機能を仕舞い込み過ぎといった感じがします。もっとも、そのおかげで画面は広く使えますから、時間を惜しまず納得の行くまで作業をしたいというときには最適なソフトになりそうです。撮影情報の表示パネルからも彩度、コントラスト、シャープネスなどが調整できるようになったのは大きな進歩で、これは傑作と言えそうです。今後のバージョンアップに期待したいところです。

高機能でも重くないペンタックス純正「PHOTO Laboratory 3」

実はペンタックス「PHOTO Laboratory 3」の推奨環境も、ニコン「Capture NX (Ver.1.0)」とほとんど変わりありません。なのに、少なくとも私の環境ではあまり待たされることなく動いてくれます。それは、RAW調整の確認に縮小プレビュー画像を用い、実画像は部分拡大のときしか表示しないからです。さらに複数ファイルをまとめて一括調整することもできますし、各種調整結果をまとめてプレビューに更新することもできます。各機能の操作パネルも常時見やすく表示でき、自分のパソコン環境に合わせて実に要領よく作業を進めることができるわけです。難点は調整値の保存や呼び出しが手動操作に限られることでしょうか。これが「Camera Raw 3.3」のように自動化されたり「Capture NX」のように元のRAWファイルへ添付できるようになれば、大量作業も怖いものなしなのですが。無償ソフトにはわがままな要望でしょうか。

「PHOTO Laboratory 3」はK100Dの同梱ソフトですが、従来製品のユーザーへも無償でアップデータが公開され、多くのペンタックスファンから歓迎されました。なぜなら今回、(株)市川ソフトラボラトリー開発の比類ない調整能力を持つRAW対応ソフト、「Developer Studio 2.0」と共通のRAW現像エンジン、「SILKYPIX RAW SDK」が採用され、画質や機能が大幅アップしたからです。
これは助かる、と私が特に感じたのが「ハイライト調整」。これまでのRAW調整では、ファイルに記録されているシャドウからハイライトまでの広い諧調をできる限り再現しようとすると全体の明るさや色調のバランスが崩れてしまい、何らかの後調整や部分合成などが必要でした。「ハイライト調整」を使えば、そのままでは白く飛んでしまう雲や明るい青空などの色調も、シャドウや中間調に影響を与えることなく一層豊かに再現することができるのです。私はそのようなシーンの多くをRAWモード撮影してきましたので、ついに日頃の行いが報われるときが来たと、例えようのない喜びを感じているところです。
さて、朗報はまだまだ続きます。「Developer Studio」は間もなくバージョンアップを迎えるのですが、その「試用版」が公開されているので使ってみました。一番試したかったのは「ハイライト調整」の新メニュー、ダイナミックレンジ拡張機能です。その効果ですが、これはまさに救世主ですね。動作も快調です。近い将来、「PHOTO Laboratory」にも同じ機能が追加されると良いのですが。

「PHOTO Laboratory 3」は現像エンジンこそ市川ソフトラボラトリーの協力を得ていますが、レンズの描写力を最大限に引き出すべく、色再現性の設計にはペンタックス独自の意匠が反映されています。長い間ペンタックスレンズを育んできた工芸の里小川町は、かつて絹織物の名産地でもありました。もう斜陽化してしまいましたが、私の家のすぐ側に、今もわずかながら桑畑を見ることができます。「SILKYPIX」の名前の由来は「絹のような滑らかで自然な映像」(「SILKYPIX」公式サイトより)。今回の両社の協業は、まさに最高の出会いと言えるのではないでしょうか。これからの展開に期待は高まるばかりです。

と、ここまで書き進んでふと、来月にも詳細が発表されそうなペンタックスの1000万画素中堅機を、早く試してみたくなってきました。こうなるとやはりペンタックスをメイン機材にして、D200の出番はいざというとき(どんなとき?)のためにとっておいた方が良いのかな、という思いも浮かんできたりするのでした。

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2006年08月09日

ニコンD200の疑問と新製品D80に見る挽回策

心配していた台風7号の影響ですが、私の地元ではそれほど風雨も強くならず、昼過ぎには天候も回復に向かいました。

さて、本日(株)ニコンは9月1日発売予定の新製品、D80の詳細スペックを公表しました。以前からニコン公式サイトで予告されていたので大体の機能は想像できていたのですが、一番気がかりだったのは言うまでもなく、昨日の記事で私が指摘したメニュー画面の使いにくさが改善されたかどうかです。ニコン自身もこの問題は認識していたのでしょう。次の方法で解決を試みたようです(ニコン公式サイト内、D80 機能と特長2より抜粋)。

あらかじめ登録したメニュー項目だけを表示する「マイメニュー設定」を新たに採用し、必要なカメラ設定メニューをすぐに呼び出すことができます。

この挽回策が具体的にどのようなものなのか、説明を読んだだけでは分からない部分が多いのでまだコメントできる段階ではありません。要はユーザーがどう使いこなすかにかかってくると思います。

ニコンD80は中級機D70sの後継機とみなせますが、中堅機D200から機能の多くを継承しつつ贅肉を削り、そつなくまとめ上げたという印象を受けます。何より魅力なのは、レンズ別の実勢価格が10万円ちょっとという手頃な値段でしょう。イメージセンサーのスペックはD200と同じ1020万画素ですが、アナログ信号段階での処理系統も含め新設計ということです。後から開発された製品がそれ以前の上位機種の品質を上回ることはよくあることなので、D80にもD200以上の高画質が期待できそうに思われます。
それより私が期待しているのは、自動露出やオートホワイトバランスの精度の向上です。D200もかつてのD1Xやペンタックス*istDに比べれば幾分向上しているのですが、先に購入したペンタックスK100Dの方が、同時に使い比べてみて明らかに優っていました。D200はときどき赤味や青味が強まったり極端な露出アンダーになったりする傾向があるのに比べ、K100Dはほとんどのシーンで及第点が取れたのです。測光センサーはD200の方が比較にならないほど贅沢な構造なのですが。
オートフォーカスの精度については、驚いたことにK100DはD200と十分互角という印象を受けました。まだ十分な比較はしていませんが、苦手なシーンはK100Dの方が少ないかもしれません。ただ、そのスピードやシャッターレリーズタイムラグの短さとなると、どうしても重装備のD200に太刀打ちできないのは否めません。この点ではD80にも1、2歩譲ることになりそうです。
なお余談ですが、K100Dのレンズ別の実勢価格は、610万画素機ということもあり僅か6~7万円台。さらに2006年10月15日までメーカーキャンペーンの1万円キャッシュバックがあること、RAW対応ソフトが同梱で別に購入しなくて済むこと、予備のバッテリーが汎用品の単三型で安上がりなこと、ほぼ全交換レンズで手ぶれ補正が機能することなどを考えると、信じられないくらいお買い得なデジタル一眼レフと言えそうです。

秋にはいよいよ、ペンタックスからも1000万画素級の新製品の詳細スペックが発表される見通しですが、D80とどちらの購入を優先すべきか正直悩むところです。私のメインカメラがすでにD200という実情もあり、より高画質が望めるうえ操作性も改善され、値段も手頃なD80を追加購入するのが経済的に見ても最善の策になるのでしょう。今までニコンとペンタックスとシステムの異なるカメラを同時に出動させていたため、交換レンズやアクセサリー類の重複が多く、撮影現場で混乱の原因にもなっていました。K100Dや*istDは小型軽量かつ乾電池でも機能する利点を活かし、当面補佐役に添えるのが妥当かもしれないですね。

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2006年08月08日

ニコンD200の疑問とペンタックスの思想

ニコンD200を使い始めてから半年が経ちました。たった半年ですが、この時期このカメラとの出会いがなければこうも仕事は進まなかったな、と思える場面を幾度となく経験しました。
お寿司屋さんの店頭メニューディスプレイ、中学校の移動教室の集合写真、ありとあらゆる運動部の公式試合、看護専門学校の戴帽式。守備範囲の広い、文字通りの中堅機だと実感しています。
激しく動き回る被写体にも素早くピントが合い、シャッターボタンを一押しすればすべての動作がテンポ良く進んでいく。スポーツ撮影に強いのはもちろん、撮影後の再生や拡大表示が早いので、メニュー写真のように撮り直しの難しい撮影でも料理人さんやデザイナーさんとの確認がスムーズにでき、忙しいスケジュールに対処して行くことができました。写り具合は「さすが1000万画素」の一言に尽きます。
プロ用一眼レフカメラの製造では特別長い歴史を誇るニコンですが、中堅機にさえその底力を見せ付けられる思いでした。

デジタル撮影ならではの写真表現の原点はどこに?

しかし、当初は衝撃をもって迎えたものの、いくらも使わないうちに私は、D200に強い違和感を覚えるようにもなっていきました。

彩度(色の鮮やかさの度合い)、コントラスト(明暗の諧調再現)、そしてシャープネス(輪郭強調)。写真表現の重要要素であるピントや露出(明るさの調整)、ホワイトバランス(照明光別の色補正)に加え、デジタル撮影では画像の仕上がりに関する先の3つの要素が調整項目として欠かせないものになりました。撮影者はシーンに応じてこれら項目を巧みにコントロールし、自分の表現意図をより明確に写真の中へ反映することができるようになったのです。
ところがD200では、ピントや露出、ホワイトバランスは素早く手動調整へ切り替えできるのに、彩度やコントラスト、シャープネスに関しては極めて手動調整しにくい設計になっているのです。調整時は背面のメニューボタンを押し、モニターの画面表示をキー操作で切替えながら、何度も行ったり来たりしなければなりません。代わりに半自動と言えば良いのでしょうか、「仕上がり設定」という、「標準」、「ソフトに」、「鮮やかに」、「より鮮やかに」、「ポートレート」など表現意図に応じたメニューを選べば、あとはカメラが適宜自動調整してくれるニコン独自の新機能が備わっています。ですがそれも、撮影中積極的に設定変更しやすいようにはできていません。まるで“隠し機能”のようなこうした扱いは、いったいどういうことなのでしょうか。使用頻度に関わらず、こうした重要な調整機能は奥へ仕舞い込むべきではないと、私は考えます。
RAWモードで撮影すれば、後から対応ソフトで画像仕上がりの各要素を再調整することもできます。ニコン純正RAW対応ソフト「Capture NX (Ver.1.0)」はダウンロード販売価格が13,320 円(税込) ということですが、機能の差こそあれ今や同種のソフトを無償でカメラに同梱しているメーカーが多い中、この値段が安いか高いかは評価の分かれるところです。

ペンタックスに貫かれた写真表現の思想

もう一台、私が3年近く愛用してきたペンタックス*istDではどうでしょう。*istDにもD200とほぼ同じ位置にメニューボタンがありますが、押して最初にモニターへ表示されるのが彩度、コントラスト、シャープネスをそれぞれ一緒に調整できる画面です。この設計思想は7月14日に発売された最新のファミリー層向けエントリー機、ペンタックスK100Dにも貫かれています。同機にはニコンの仕上がり設定に似た「画像仕上」という設定機能もあるのですが、「鮮やか」と「ナチュラル」の2種だけに絞り、初心者向け撮影モード以外では彩度、コントラスト、シャープネスも同じ画面上で手動調整できるようになっています。私は、これこそがカメラ本来のあるべき姿だと思っています。もちろん、純正RAW対応ソフト「PHOTO Browser 3」、「PHOTO Laboratory 3」は無償でカメラに同梱されています(そうです。7月20日、レンズの分解清掃をペンタックスのサービスセンターへ依頼した帰り、私はK100Dを購入したのです)。

 PENTAX「美写華写ブログ」:2006年8月8日付記事
  圧倒的な売れ行きのK100D、どこが評価されたのか?

8月8日、ペンタックス純正RAW対応ソフト最新版アップデータ公開

ご参考としてお知らせいたします。

 「デジカメWatch」:2006年8月8日付記事
  ペンタックス、*ist DシリーズのソフトをK100D相当にするアップデータ公開

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愛用のペンタックス交換レンズが里帰り!?

暑い毎日が続いたかと思えば、今度は台風7号がこちらへ接近中。風水害が心配です。今年は梅雨明けも遅く、各地で水の被害が続いたのでもううんざりなのですが。
幸い、私の住む町では今のところ大きな水害もなく過ごせていますが、日常生活面ではカビが生えやすくなるなど、いろいろ困ったことがありました。

やっちゃいましたよ、私

精密光学機器に湿気は大敵! 故に保管も油断大敵!
にもかかわらず、大事な大事な、超お気に入りのペンタックス謹製望遠マクロレンズ、SMC PENTAX-FA 100mmF2.8MACROの内側のレンズ表面を、湿気で曇らせてしまったのです。
外側なら自分で拭けば済むことですが、内側なのでどうにも手に負えません。
このところニコンD200の出番の方が多くて、ついついペンタックスのレンズ群をバッグ内に仕舞いっぱなしにしていたのがいけなかったのでした。
ほかのレンズは無事でしたが、この望遠マクロだけは内部に特別湿気がこもりやすい構造だったようです。やっちゃいましたよ、私。

工芸の里小川町で培われたレンズ造りの匠の技は、今…

このまま放置すればたちまちカビだらけに(ガラスにもカビは生えるんです)!
慌てて新宿のペンタックスフォーラムにあるサービスセンターへ持ち込んだのが、7月20日のことでした。点検していただいたところ、結局工場へ送って分解清掃してもらうことに。。

早速手続のため修理票に自宅の住所を書いたのですが、そのとき私は意外な事実を、担当窓口の方から教えていただいたのです。
「お客さま、お住まいは私どもの小川の工場の近くなんですね」
「はい」
「実は、交換レンズに関しては、修理は小川でやってるんですよ」
「え? 益子事業所へ移ったんじゃなかったんですか!?」
確か2002年春以降、ペンタックスの小川工場は事業所としての役目を終え、交換レンズ生産の拠点は益子事業所(益子焼のふる里、栃木県芳賀郡益子町)などへ統合されると報じられていました。

 ペンタックス(株):2001年5月21日付プレスリリース
  中期経営革新計画の策定についてのお知らせ

私は不思議に思いそのことをお尋ねしました。すると、
「いえ、まだ完全に引っ越したわけじゃないんです」
お話しによると、交換レンズの組立ての拠点は目下拡張工事中のベトナム工場へ移行しつつあるとのことですが(ブログ「比企の里から '04-'06」の2月3日付記事をご覧ください)、部材の加工は益子事業所のほか、一部はまだ設備の都合で小川工場でも担っているということでした。私はてっきり、地元はもう写真用レンズとの縁はすっかり絶えてしまったのではないかと寂しい思いをしていたので、この予想外の情報に何だか嬉しくなってしまいました。規模こそ縮小されてしまいましたが、何と工芸の里小川町には、写真用レンズ造りの匠の技が今なお息づいていたのです。

ペンタックスオプトテック小川

旧小川事業所は2002年春の閉鎖後しばらくの間、東京都板橋区にある本社開発技術センターの施設の一部、オプティカルテクノロジーデパートメントとして位置付けられていました。その正門に去年半ば頃から、「ペンタックスオプトテック株式会社」と書かれた看板が新たに加わり、その変化を私は興味深く見守っていたのです。
ペンタックスの「環境・社会報告書 2006」記事中の「各社の活動状況」を見たところ、ペンタックスオプトテックは次のように紹介されていました。

(益子サイトは)ペンタックス(株)益子事業所及び2005年7月の分社化に伴い新たに設立されたペンタックスオプトテック(株)の二社が共存し、同一サイトとして一緒に環境活動を 推進しています。
ペンタックスオプトテック(株)は、元々益子事業所の一部であった精密加工部門が分社化されたものであり、ペンタックス製品の基幹部品である光学部品・精密部品の加工を主 体に業務を行っていますが、最近ではグループ以外の外販にも注力しているところです。

また、同報告書巻末掲載の「沿革(主に環境関連)」の中には「小川事業所(現ペンタックスオプトテック(株)小川)」や「オプティカルテクノロジーデパートメント(現ペンタックスオプトテック(株)小川)」などの表記が見え、旧小川事業所はペンタックスオプトテックとして分社化された精密加工部門の一員として、新たな事業の担い手になったことが分かります。
同社は2005年7月1日に設立され、親会社とは独立した営業部門も新設されました。グループ外部との協業も進めるため、公式サイトを通じて宣伝活動を開始しています。
なお、ペンタックスVN(ベトナム工場)も同社の関連会社となるようです。

1週間早い納品

7月29日(小川七夕まつりの初日)、待ち焦がれていたSMC PENTAX-FA 100mmF2.8MACROが私の家へ宅配便で到着しました。見積り票より、ざっと1週間早い納品です。外観はちょっとくたびれているものの、レンズはすっかり新品同様に蘇りました。これからはもっと管理に気をつけ、大切に使っていこうと思いを新たにした私です。

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2006年08月01日

読者の皆さまへ 残暑お見舞い申し上げます

早いものでもう8月ですね。
関東はおととい、ようやく梅雨明けを迎えました。
皆さま、いかがお過ごしですか。
蝉時雨が近所中の林の中から聞こえてきます。
残暑お見舞い申し上げます。

私は去年のこの時期、暑さに負けて体調を崩してしまいました。それがきっかけでリンパ節炎を患い、例えようの無い疲労感に襲われ、年末年始を挟んで仕事を休まなければならなくなってしまいました。一時はリンパ腫も疑われ、組織検査のため初めて手術を経験したり(日帰りで済みましたが…(^_^;))。
この夏はそんなことのないよう、睡眠や食生活に気を配り、胃腸を冷やさないよう注意しながら過ごしています。

さて、すっかり更新が滞りがちになってしまいました。
この春から、以前は多忙期だけのお手伝いだった学校アルバム関係の撮影をレギュラーでお引き受けすることになり、忙しい日々を送っています。時代の趨勢で撮影もいよいよデジタルになり、取材後はデータ整理のため、私のパソコンもフル稼働を続けています。
今は各校とも夏休みに入ったので、新学期までは幾分ゆっくりできそうです。
リニューアルの方針も模索しなければならないのですが、焦らずマイペースでやっていこうと思っています。

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