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2006年08月14日
オンデマンド印刷でリーズナブルな写真集を作りましょう
デジタルフォトセミナーを受講しました
先週末、東京の大手町で(株)アスカネット主催のデジタルフォトセミナーが、営業写真館関係者向けに開催されました。私も日頃お世話になっている越生町の(有)山口写真の紹介で、フォトグラファーとして受講させていただきました。
同社は1冊から作れる写真集「マイブック」や「プロフォトブック」などのネット受注サービスを次々展開し、注目を集めています。会場にも展示コーナーが設けられ、「プロフォトブック」の様々な作例を手に取って確かめることができました。
目覚ましいオンデマンド印刷の進歩
これら写真集は高性能オンデマンド印刷機で網点印刷され、丈夫なハードカバーを付けて丁寧に製本されます。その品質は書店で売られている写真集と比べても、何ら遜色はありません。しかも、1ページ当たりの単価はインクジェットプリント並みに安く抑えられているのです(「マイブック」の場合)。光ブロードバンド環境があれば自宅でデータを編集し、スピーディにネットで発注することができます。
私が都内の出版社に勤務していた5年ほど前、編集部内のオンデマンド印刷機への認識はまだ、オフセット印刷機の代用品という程度のものでした。社内に数台しかないパソコンは主に事務処理用で、ネット環境はナローバンド。私は自主的に自分のノートパソコンとようやくポータブル化されたMOドライブを持ち込み、ワープロソフトによる図表や表紙等の版下制作を自己流で始めたところでした。プロ用デジタル一眼レフもニコンD1Xが実勢価格50万円を切り、自分にも何とか購入できたのもこの頃です。
それにしても、たった5年です。世の中こうも状況が変わってしまうものかと、本当に驚かされました。出版も、写真産業も、ビジネススタイルが大きく変わりつつあることを強く実感させられました。
いよいよ存続が危ぶまれる銀塩写真
展示コーナーで、アスカネットの営業の方に質問してみました。
「このような写真集を銀塩印画紙で作るサービスも見ますが、これからはオンデマンド印刷とどちらが主流になるのでしょう」
「銀塩は今、現像液の廃液処理が大変なんです。需要が減って、回収業者が次々に事業を縮小しています。もう印刷にしか頼れません」
また、セミナーの講師として招かれたSkip Cohen氏によると、アメリカ国内のプロのデジタルカメラの使用率は約75%に達しているそうです。そして、
「アメリカではすでにフィルムは死んだ」
とコメントしました。
私はそのときまで、フィルムも銀塩印画紙も、需要があれば細々とでも生産は続けられるだろうと楽観視していました。しかし、肝心の現像サービスの方が、先に事業として成り立たなくなりつつあるというのです。今や世界中に普及した店頭プリント用のミニラボマシーンも、いつまで薬品関係のメンテナンスが受けられるか店主にとっても不安は尽きない、という話も後日耳にしました。写真プリントの主流は、確実に銀塩からインク方式へ変わろうとしているようです。
写真館のデジタル化とその新しい役割り
プロのフォトグラファーの間では、撮影のデジタル化はまず速報性が求められる報道分野から始まり、次いでCGデザイナーとの協業が多いコマーシャル分野、両者の性格を含む雑誌などの出版分野へと広がっていきました。その中にあって営業写真館は、最もデジタル化が進んでいない分野かもしれません。その必要に迫られることが少ないうえ、逆にフィルムで撮ることをセールスポイントにしている経営者が少なくないことも背景にあるでしょう。
しかし埼玉県内の写真館では、デジタルフォトの勉強熱は年々高まってきています。ソフトが進歩し、多様な画像修正が可能になってきたからです。最初の頃はフィルムで撮影し業者へ頼んでデジタルデータ化してもらっていたところも、時間と費用がかかるため、次第に安くなったデジタルカメラを使い始めています。そして、それを当然と思うお客さんも増えてきました。
写真館経営者の新しい悩みは、撮った写真のデータの保管をどうするか、ということです。そのために必要な設備が思いのほか高いのに、これまで再プリントの注文に来るお客さんはほとんどいなかったという前例が、更なる投資を思いとどまらせているのです。せっかく著作権は写真館に帰属するのですから、その豊富な資産を再利用できる良いアイディアが望まれているのです。
そこで期待されるのが、先に紹介したようなオンデマンド印刷による写真集制作サービスです。シンプルなものは家庭からも注文できますが、人生の記念になるようなフォーマルなものは制作工程が複雑で、業者と契約のあるプロ専用のサービスになります。お客さんにとっては出産、誕生日、七五三、入園・入学式、卒業式、成人式、結婚式と、たくさんのイベントを写真館で撮って本にしてもらい、預けたデータを再編集して1冊の名場面集に作り直してもらう、といったこともできます。写真館にとってもリピーターの獲得につながり、設備投資に前向きになれます。ほかにも文集や画集、陶芸や手芸、木工などの作品集作りなど様々な営業品目の広がりが考えられますから、デジタルフォトの勉強にも益々意欲が沸いてくる、というわけです。
子ども写真館のようなチェーン店はどうか
子ども写真館のような全国規模のチェーン店では、店舗にもよりますが比較的早く撮影のデジタル化が進みました。撮ってすぐモニターで見られるサービスが、お客さんに喜ばれるからです。ただ、各店のWEBサイトを見ても、撮影後のネガやデータの保管方針についてはほとんど触れられていません。また、基本的に子ども専用なので、人生の記録は成人式が上限。以降の撮影は、保護者になられてからお子さまやお孫さんの同伴でお近くのチェーン店をご利用ください、といったスタンスです。ビジネスとしては、これで成功なのかもしれません。
ローカル規模のチェーン店なら、もっと良心的です。私が生まれ育った東京都板橋区赤塚新町に本社を構える(株)写真館ピノキオは都内中心のチェーン店ですが、ネガの保管体制や考え方をはっきりとWEBサイト上に明記しています。また、生涯を通じて利用されることも歓迎しています。そのため、店舗名は子ども向きでもキャッチコピーは「ファミリー写真館」です。第1号店の光が丘店開店は私が小川町へ越してきた後なので、お世話になる機会がなかったのは残念です。
大切にしたい、地域の写真館との絆
転勤などで引越しの多い家庭には、全国規模の写真館チェーン店も頼れる存在になり得るでしょう。そのためにも、撮影後の写真や顧客情報のデータ管理体制を万全に整え、全国ネットで大切な思い出づくりをサポートして欲しいものだと思います。ただしそのようなサービス維持にはコストがかかりますから、妥当な料金内で撮影のクオリティにも高い水準を求めるには、ある程度限界があっても仕方ないのかもしれません。
ここで改めて見直したいのが、個人経営の写真館です。地域密着型ですから店主はお得意さんの生い立ちはきちんと覚えてくれていますし、出張撮影にも応じる店が多いので好みの場所で撮ってもらうこともできます。写真集作りが前提なら、こうしたフィールド撮影のノウハウもチェックポイントですね。大概はお薦めのロケ地も熟知してることでしょう。
いつからでしょうか。児童虐待事件や年少者が引き起こす深刻な事件…。一見平穏な日常社会の中で、そういった悲惨なニュースが報じられない日はもう、ほとんどなくなりました。
かつてどの家庭でも写真は「御写真」と丁寧に呼ばれ、家族一人ひとりや友人、知人、親戚との絆を結ぶ共有財産として、今より大切に扱われていたように思います。だからカメラもその家の精神的な財産で、躾として子どもは成長するまでみだりに触れてよいものではありませんでした。そして写真館で記念写真を撮ってもらうというのも、そのこと自体が家族にとって神聖な儀式を意味しているかのようでした。篠田正浩監督の映画『瀬戸内ムーンライト・セレナーデ』(阿久悠 原作)の冒頭で、主人公の少年の一家が土地の写真師(写真館のフォトグラファーの古い呼び方)の大きな木製写真機の前に立ち、戦死した兄の遺骨(本当は…?)と一緒に記念写真を撮ってもらうシーンは、そんな昔の家族像を象徴しているようで深く印象に残っています。
自分の撮った誰かの晴れ姿が、事件の被害者や加害者としてニュースで流れたとき、報道の役に立てたと思う写真館のフォトグラファーはいないはずです。ただただ、自分の無力さを感じるだけでしょう。
ネガも写真のデータファイルも、そこに写されたお客さんとの再会が祝福される日を待っているのです。そのための機会を創造して行くことが写真館のこれからの大切な使命になるなら、その関係の仕事を依頼される身としても、幸せに生きていけるのではないかと思っています。
画題:『祇園祭の裏通り』
埼玉県比企郡小川町小川にて
2006年7月30日撮影
Camera:PENTAX K100D
Lens:SMC PENTAX-FA☆ 85mmF1.4[IF]
夕暮れ時の南裏通りで、ふる里の山、笠山を背景に。
八和田小学校に通う姪のNAOちゃんです。
叔父馬鹿写真でゴメンナサイ。。。
項目: 写真・カメラ
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