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2006年08月31日
一眼レフカメラという商売 (その2 ペンタックスのソリューション)
〔一眼レフカメラという商売 (その1 家電メーカーの挑戦)へもどる〕
期待したい、ペンタックスがこれから展開するソリューション
ペンタックス上級執行役員の鳥越興さんが、この春米国で開催された「PMA」ショーでImpress Watchのインタビューに応じ、開発中の新製品を軸としたビジネスソリューションの展望について回答されています。その内容は、キヤノンのコマーシャルフォトスタジオ向けデジタル一眼レフであり、最上位機種に位置するEOS-1Ds Mark IIに対して、真っ向からライバル宣言するものでした。
「この世界はトータルソリューションとしてビジネスモデル、市場環境を整えていかなければうまくいきません。スタジオやコマーシャルフォト、印刷関係といった現場に対して、入力の道具としてカメラを提供するだけでなく、加工、保存、出力といったトータルのソリューションを提供していかなければなりません〔中略〕まずはしっかりとカメラを作り、それをもっていろいろな意味で、いろいろなところと提携、協業を進めていきます。デジタル技術を用いた新しい道具として、ユニークな環境を作れると確信しています」
「デジカメWatch」:2006年2月27日付記事より抜粋
【インタビュー】デジタル一眼に必要な要素のすべてに取り組む
ペンタックス上級執行役員イメージングシステム事業本部長 鳥越興氏
まだ構想段階であるため、具体的な内容についてまで触れることはできませんが、私は非常に楽しみにしています。キヤノンは多彩な機能を盛り込んだ商品をユーザー層別に造り分けることが得意なメーカーですが、ペンタックスは機能をシンプルに整理し、比較的少ない商品構成で幅広くユーザーの要求を充たしてきた伝統のあるメーカーです。そこにはメーカーとユーザーとの間で、プロ、アマに関係なく、カメラを道具として使いこなすため創意工夫し合ってきた喜びが受け継がれているように思えます。
歴史をさかのぼればキヤノンの前身となる精機光学研究所は、創業準備段階ではカメラの試作に当たった技術者が経営に深く関与していたものの、1933年の発足後は資本家やビジネス経験者が先頭に立って技術者を組織し、小さな町工場から言わば正攻法で成長を遂げたメーカーです。
ペンタックス(2002年以前は旭光学工業株式会社)は1952年に日本で初めて35mm判一眼レフカメラの商品化に成功し、独自に改良を重ねた末、その実用性の高さを世界中に実証して見せたメーカーとして知られています。その指揮を執ったのが、当時の社長だった故松本三郎さんでした。
松本さんは夜学へ通いながら、叔父が1919年に創業した旭光学工業合資会社(ペンタックスの前身)のレンズ研磨の現場で働き、様々な技術を身に付けました。やがて若くして会社経営を任され、1938年に旭光学工業株式会社を起こしましたが、敗戦の煽りで一時解散。会社復興の意欲を支えたのが、趣味だった写真を撮るためのカメラを自ら開発したいという、強い職人意識だったと伝えられています。かつて愛用したドイツ製のカメラを参考にしながらも、新たに招いた技術者の協力を得て完成させたのが、まったく独創的な一眼レフ、アサヒフレックスI型だったのです。
ペンタックス現社長の浦野文男さんも、私が大学1年の頃から愛用してきたLXの開発リーダーを務められてきた方です。社員の方にお尋ねするとよく、このカメラはベテランの職人が手間隙かけて手作業で組み立てなければならず、造れば造るほど赤字ですよという答えが返ってきたものですが、それでも1980年から21年間にわたって驚異的なロングセラーを記録しました。電池が切れても手動操作で撮影が続けられる、故障知らずのタフなカメラです。
独創的な職人集団と評されてきたペンタックスの企業風土は、オーダーメイドやカスタムメイドのノウハウが求められるビジネスソリューションの構築には元々高い適性を備えていると言えるでしょう。ともすると、自社製品を売らんがためのセット販売に終始するおそれもあるサービス形態ですが、使い手の身になって無駄を省き機能性を高めてこそのソリューションです。本格的なデジタル時代を迎え、ソフトウェアの開発やカスタマイズなども合わせてどのような展開を見せてくれるか、期待したいと思います。
一眼レフメーカーの本分
最後に、家電メーカーがデジタル一眼レフ市場へ参入したがる最近の傾向について、気になる点を一言。
価格低迷によるコンパクトデジタルカメラの不調を、より付加価値の高いデジタル一眼レフや交換レンズの収益で挽回したいという考えは、分からないでもありません。しかし本来、コンパクトデジカメ事業の営業上の問題は、より機能や使用目的が明確な魅力のある商品を考案するなどして、その中で解決を図っていくべきではないでしょうか。
デジタル一眼レフ事業による収益は、その関連システムをより社会に役立てるための技術開発や営業活動に投資していくのが、一眼レフメーカーの本分だと私は思います。
項目: 写真・カメラ
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