メイン
« ペンタックスK10Dをアドビ「Photoshop Lightroom」デモ会場で展示
| ペンタックスK10Dでスポーツを撮る »

« 2006年02月以前 メイン | 2006年03月以降 メイン »

2006年12月11日

ペンタックスK10Dを手にして思ったこと

撮影会や講習会、フォトコンテストなどのイベントを通じ、日本のカメラメーカーは皆、長年にわたりアマチュアカメラマンの育成に力を注いできました。これは世界に誇って良い、立派な文化だと思います。
中でもペンタックスは、一眼レフカメラを大衆に普及させ、イベントに参加する受講者とプロの講師との間でカメラの上下差を無くし、同じ条件で写真の勉強に臨める環境を整えたという輝かしい功績を持っています。
1964年発売のSPは正にそのことを象徴するカメラで、その後もモデルチェンジを重ねつつ、ペンタックスを代表するロングセラー機になりました。

今日、一眼レフと言えばデジタル一眼レフが当たり前の時代になりましたが、先行メーカー各社が推し進めてきた営業戦略は、次の2点に集約されます。

 1.コンパクトデジカメユーザーに対する買換えの促進。
 2.フィルム一眼レフユーザーに対する買換えの促進。
   (この記事の本題になります。)

コンパクトデジカメで写真を撮り始めたユーザーは、フィルムの選び方もカメラへの出し入れの仕方も知りません。だからレンズ交換のできる一眼レフを使いたいと思ったとき、当然コンパクトデジカメと同じように操作できるデジタル一眼レフを望みます。つまりスナップ、ポートレート、風景、複写など、撮りたいシーンに応じたモードを選べば、あとは全部自動設定してくれるようなカメラです。
一方フィルムを選んで使い分けてきた一眼レフユーザーなら、デジタル一眼レフにも似たような選択機能を望みます。やはりそれも、スナップ、ポートレート、風景、複写など、撮りたいシーンに応じたモードを選べば、あとは全部自動設定してくれるようなカメラということになります。
露出も色調もピントも何でも自動設定でカメラ任せ。もちろん、ユーザーの思い通りに使えるよう手動設定もできるカメラが大半ですが、誤操作防止の意味もあるのか、その多くは撮影中に設定を切り替えにくい構造になっているようです。こうした傾向はプロ向けのデジタル一眼レフでも同じで、プロの間でも自分の専門分野に直接関係ないモードや手動設定機能には触れたがらず、ロックがかけられればそれで封印してしまう人も最近は少なくないようです。モードや設定を一度決めたら、あとはひたすら撮ることに専念する。ある意味それも、プロならではの合理的精神の現れではあるのですが。

これまでフィルム一眼レフ市場を開拓してきたメーカーとしては、デジタル一眼レフの事業展開でもその市場を失うわけにはいきません。プロにもアマチュアにも馴染みの無かったデジタル一眼レフをいかに買換えやすい商品に仕立てるか。それを考えることは、ビジネスとしてはセオリー通りかもしれません。
しかしここで、率直に問いたいことがあります。デジタル一眼レフのセールスポイントとは、そもそもどのようなものだったのでしょう?

フィルムカメラにはフィルムカメラの、デジタルカメラにはデジタルカメラのメリットがそれぞれあり、両者は本来どちらか一方に置き換えられるものではないと私は考えます。フィルムは古くからありますが、決して古い、時代遅れのメディアではありません。ただ、パソコンやインターネットが普及したことで新たにそれらと親和性の高いデジタルカメラのメリットが評価されるようになり、その需要の占める割合が圧倒的に増えただけのことです。
パソコンやインターネットが使えない、またその必要にさえ迫られていないカメラユーザーにもデジタル一眼レフへの買換えを促せば、メーカーはさぞ儲かるでしょう。でも、それがお互いにとって幸せな関係かというと疑問が残ります。
何でも自動化され、これなら安心と思い無理して買換えた人たちは今、自分がフィルム撮影で培ってきたノウハウを手放したことについて悔やみ、機械に使われる寂しさに悩まされているではないでしょうか。それがプロ社会の出来事なら、さらにお金に使われ働かされる寂しさまで味わうことになるのです。

今、私の手元には2台のペンタックスK10Dがあります。このデジタル一眼レフにはコンパクトデジカメのような露出に関するシーン別の自動モードも、フィルムを使い分けるような色調に関するシーン別の自動モードも備わっていません。コンパクトデジカメからの買換えにも、フィルム一眼レフからの買換えにも、およそ向きません。
その代わり、「ホワイトバランスって何ですか?」「RAW撮影の柔軟性とはどういうことでしょう?」という問いに、カメラで撮影して見せながら「例えばこんなことですよ」と、再生モニター上で説明することができます。デジタル一眼レフのセールスポイントとは何か、K10Dほど原点に返って真摯に追及されたカメラを、私はこれまで見たことがありません。

デジタル撮影による写真の文化はまだ歴史が浅く、その流通コストの削減手段として有望なブロードバンドのインターネット通信やオンデマンド印刷なども、技術的にはまだまだ黎明期にあります。
K10Dの前ではプロもアマチュアも、またベテランも初心者もありません。徒弟制度や労使間にあるような上下関係も、また川上や川下といった仕事を請け負う上での力関係のようなものもありません。
デジタル化されたデータを末永く社会に役立てるには、コンテンツの制作から活用に至るまで、実に多くの分野に携わる人たちの相互協力が必要になります。だから皆、お互いに先生であり生徒です。求められるのはそうした関係を育むための知識や情報、経験を蓄積し交換し合うコミュニティの形成です。

関連製品を提供するメーカーにも、そのサポートが期待されています。

 私たちも幸せものです。

拝啓 ペンタックスさま。
増産に次ぐ増産、誠にご苦労さまです<(_ _)>
このようなカメラを世に送り出していただき、
私たちペンタックスユーザーもたいへん幸せものです。
この度迎えられたペンタックスの転換期、さらには
来年度迎えられるペンタックスブランド誕生50周年記念を
心よりお祝い申し上げます。
これからもご一緒に、写真文化を育んで参りましょう。
どうぞよろしくお願いいたします。

敬具 ペンタックスユーザー ヒロキ

項目: 写真・カメラ

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://hiki-life.net/mt3_2/mt-tb.cgi/2344

コメント

コメントしてください




保存しますか?


« 2006年02月以前 メイン | 2006年03月以降 メイン »

« ペンタックスK10Dをアドビ「Photoshop Lightroom」デモ会場で展示
| ペンタックスK10Dでスポーツを撮る »
メイン | 上へ↑