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2007年01月27日

現像用暗室のある写真教室はどうですか? -子供のデジカメに反対-

1月23日付記事1月24日付記事に関連する“重要な補足”です。

デジタルカメラで撮るものすべては“秘密の写真”が大前提
-お子さんが写した撮影済フィルムの現像は信頼できるお店へ-

大変な事を書き漏らしてしまいました。

私は1月23日付記事「現像用暗室のある写真教室はどうですか? (その1)」でこう述べました。

これは私見ですが、大人の指導のもとであれば、写真は小学校の高学年になればもう始めても良いのではないでしょうか。機材もフィルムカメラであれば、パソコンやインターネットは必ずしも学習しなくて済みます。

しかし、それでは説明が不十分でした。
私はあえてこう補足したいのです。

 ≪お子さんにデジタルカメラやカメラ付き携帯は買い与えないでください≫

と。

小学校低学年以下のお子さんなら、玩具的なデジカメを保護者の目の届く範囲内でなら、持たせてあげても良いかもしれません。いわゆる「ごっこ遊び」の範疇として。
けれどもそれを、自分で撮った写真をパソコンへ転送し、そこからメール送信やネット公開もできる年令になるまで使わせ続けることには、私ははっきりと「反対」の意思表明をしたいと思います。
それはすでに単なるカメラではなく、全世界的な通信網の個人情報端末なのだといいう認識を、保護者もお子さんも持たなければいけません。カメラ付き携帯なら、なおのことです。
自分の成長に応じてより本格的なカメラを欲しがるお子さんには、およそ中学を卒業するまでの間は、私は迷わずフィルムカメラをお勧めします。なぜなら撮影済のフィルムは、必然的に現像に出したお店で第三者の(それも地域の大人の)目を通すことになるからです。そこには見出しに掲げたような“秘密の写真”はありえません。もしパソコンでの処理やメール送信、ネット公開などの必要があるなら、現像後にプリントをスキャナーで取り込めば良いのです。費用や手間が余計にかかることは、ひとまず忘れてください。
子供は、自分が撮った写真を目上の人に見てもらい、様々なアドバイスを受けることで成長できるのです。写真の技術だけでなく、カメラを通じて社会や自分自身との向き合い方、つまり家族間や友人間、地域社会の中でのコミュニケーション能力もそこから養えます。写真が見られることを意識するというのは、同時に見られたくない、見せたくないという感情も抱くことになります。それも一つの成長だし、プライバシー権など人権の大切さについて考えるきっかけにもなると思うのです。
だからこそ、撮影済フィルムの現像をどのお店に出すかはとても重要です。値段の安さや仕上がり時間の短さだけで決めることはできません。保護者の方にはできれば、お子さんの撮った写真を自分の子が撮った写真と同じように親身になって見てくれる店員さんのいるお店を、探してあげてほしいと思います。お子さんが自宅の暗室で現像、プリントする場合も、できるだけ作業に立ち会ってあげてください。そして仕上がった写真にはちゃんと目を通してあげてください。

★ご注意★

写真の現像、プリントを受注するお店及び現像所にとっては、お客さんに依頼されたサービスを忠実に行うことが仕事であり、写真の内容までチェックするのは本来の役割ではありません。写真の著作権(版権)やそこに写された肖像権などのプライバシー権、表現の自由などは当然お客さんの側にあり、お店や現像所がそれを侵すことは法に則ってありえません。仕上がった写真の利用や管理についても、責任を負うのはお客さんです。

お子さんが児童ポルノ収集の被害に自ら巻き込まれないためにも

収集した児童ポルノをネット上で交換し合うグループの摘発が、県内でも進められています。新聞などの報道によると収集はいずれも極めて悪質な手口で、被害に遭うお子さんの中には、カメラ付き携帯で撮った自分の姿をネット送信させられるような例もあるそうです。例えば、女児に成りすました犯人が匿名で子供用の出会い系サイトへ侵入し、言葉巧みに相手を誘い、あるいは脅して被害者から自写像をだまし取るというのです。
こうした犯罪は密室犯罪と同じで、被害に遭ったお子さんも保護者へは相談しにくく犯人の手がかりもつかみにくいため、これまで摘発されているのは氷山の一角に過ぎないと思われます。あまりにショッキングな事件ですが、デジタル機器で撮られた“秘密の写真”がもたらす弊害の、ほんの一例として取り上げました。くり返しますが、それは単なるカメラではなく、個人情報端末なのです。

それでは、どうしてもお子さんにデジタルカメラやカメラ付き携帯を持たせなければならない事情がある場合は、どうすれば良いのでしょうか?
この問題については、世の中でも様々な意見が交わされているようです。お子さんの成長の仕方にも一人ひとり違いはありますから、一概に解決策を見出すのは難しいでしょう。
私はまず、使用目的や条件などをはっきり決めて、買い与えるのではなく保護者の持ち物を貸し与えるという形をとることが妥当だろうと思います。もちろん、ずっと持たせたままにするのではなく、機器や保存されたデータは保護者が責任を持って管理することが前提です。その後、本人の成長を見極めたうえで譲り渡せば良いと思うのですが、いかがでしょう。

ある写真屋さんでの思い出(中学校時代)

話の内容が重くなってしまったので、少し気分転換したいと思います。たびたびで恐縮ですが、私の思い出話です。
中学校時代、当時の住まいの最寄り駅だった東武東上線成増駅は急行も止まる駅で、駅周辺の商店街も活気があり、写真屋さんも何軒か集まっていました。その中の行きつけの一軒に、現像の仕上がった写真を取りに行ったときのこと。プリントの入った袋を差し出す店員のお兄さんから尋ねられたのです。

「きみ上手いね。写真好きなの?」

それは週末に家族で日帰り旅行をしたときの、埼玉県の長瀞と秩父の三峰山で撮ったスナップや風景写真でした。
お兄さんは私の撮った写真を1枚1枚ていねいに、構図やカメラアングル、光線やシャッターチャンスのとらえ方について褒めてくれたのです。それまで私は家族の誰からもほとんど自分の写真を褒められたことはなく、本当のところ果たして素質があるのかどうか自信を無くしかけていたのです。だから、思いがけず嬉しかったですね。
お兄さんは気さくに、私の撮り方について的確なアドバイスもしてくれました。上達のための手がかりをどこへ求めて良いか図りかねていたところへ、助け舟を出してもらえたような安堵感に、これからの希望がふくらんだものです。

しかしどうしたことか、その店でお兄さんに会えたのは一度限りでした。思うに、普段は出張撮影などで不在のときが多かったのかもしれません。きっと今の私と同じような仕事をされていたのでしょう。お店は大きなスーパーのテナントで入っていたのですが、残念なことに間もなく閉店でビルごと取り壊されることになり、通うこともできなくなってしまいました。

写真のことでいろいろ悩みがあったとき、特に年少者にとっては身近に相談相手がいるというのは心強いし、励みになるものです。そうした相談窓口もカメラのデジタル化で、近頃は小さな写真屋さんから大きな家電屋さんへとすっかり様変わりしつつあるようです。そこには商品知識だけは豊富な店員さんはいるのですが、実践的な撮影のアドバイスとなるとどうなのでしょう。目の前のお客さんが普段撮る写真を見ることなしに、理屈だけでどこまで適切な対応ができるのか、私には疑問に思えるのです。

カメラメーカーさんへのお願い(独り言)

完全な機会制御式の手動カメラというのは、良くできたものはメンテナンスしながら大切に扱えば、50年以上使うことだってできます。一眼レフとなると構造が複雑で磨耗しやすい部分も多いため、長持ちさせるのはやや大変ですが、それでも30年以上使おうと思えば何とかできるものです。
メンテナンス代を考えれば、買い換えた方がかえって安いという説も確かにあります。ですが、思い出を残すために撮る写真は、時としてそれを写したとめたカメラにも思い出を宿すことがあるのです。その写真とカメラの持ち主にとっては。

画材や筆記具、楽器、スポーツ用品などは学校の授業でも使われるため、技術・家庭科で使う道具類も含めそれらをつくる各メーカーでは教材として買ってもらう場合、どのような道具に仕立てたら良いかということは常に各部署で考えていることと思います。しかしカメラの場合、少なくとも高等教育までは、生徒が授業で使う機会はほとんどありません。クラブ活動でも、残念ながら近年写真部は減少傾向にあります。
保護者の方がお子さんへそれらの教材を初めて贈るときは、子供の成長を願い、決して贅沢はさせないもののできるだけ長持ちする使いやすい道具を選んであげたいと思うのが、親心だろうと思います。

これは私のお願い、といっても独り言に過ぎないのですが、仮にもしも、もしも小・中学校に写真の授業があるとしたら、カメラメーカーさんにもどのようなカメラが教材として贈り物に喜ばれるか、一度じっくり考えてみていただけたらと思うのです。商品企画や開発、設計に携わる方々にはそれこそ我が子に、おられない方なら親戚や友人、知人のお子さんに贈るつもりで、ぜひこんなカメラを持たせてあげたいと思うようなカメラを、つくり上げてもらえたらと願うのです。
お子さんがそんなカメラと青春をともにし、いつか大人になりもう一度使ってみたとき、ああ、あのとき両親は本当に良い物を選んでくれたんだなぁと感じてもらえれば、それもまた一つの幸せなのではないかと思えるからです。

これがベスト、と言えるスタイルのカメラはなかなかできないとは思いますが、今述べたような姿勢でカメラづくりに取り組んでくれるカメラメーカーさんがどこかにあるなら、とても嬉しいことですね。

項目: 一般 , 写真・カメラ

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