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2006年09月25日
オリンパスが木製デジカメの試作品を「フォトキナ2006」へ参考出展
ヒノキの美しさを生かした外装
強度はエンジニアプラスチック以上
「BCNランキング」:2006年9月26日付記事
オリンパス、木材の三次元圧縮成形加工技術を開発、
天然の木目を外装に
オリンパスは9月25日、面精度の高い金型加工技術による木材の三次元圧縮成形加工技術を開発発表しました。
同社はこの新技術で、ヒノキ外装のデジタルカメラを試作。9月26日(現地時間)からドイツで開催される写真・映像関連の見本市「フォトキナ 2006」へ参考出展するそうです。
オリンパスは、人がモノに対して情緒的価値を持てるモノづくりとは何かを考えてきました。
その一つの回答が、今回開発した自然素材である「木」を使った三次元圧縮成形加工技術であり、この技術により本来「木」が持っている天然の色・つや・木目の美しさの表現、電子機器の外装・筐体に使うことができる薄さと硬さを両立しました。
オリンパス(株):2006年9月25日付ニュースより抜粋
オリンパス、木材の三次元圧縮成形加工技術を開発
↓木製デジカメ試作品の画像は、次のページが豊富です。
「デジカメWatch」:2006年9月25日付記事
オリンパス、木材をカメラなどの筐体に用いる技術を開発
~木製筐体のデジカメをPhotokinaに参考出品
「ITmedia +D」:2006年9月27日付記事
プラスチックより堅い木製デジカメ
日本は木製カメラの主要生産国
カメラはもともと、木で作られるのが普通でした。
世界で初めて市販された写真機「ダゲレオタイプカメラ」(技術は1839年のフランス学士院科学アカデミーで発表)も木製でしたし、今日の4×5インチ判(通称シノゴ)以上の大きなシートフィルムで撮影するカメラも、携帯向きのものではまだまだ木製品を見ることができます。
そのような携帯向きの折りたたみ式木製大型カメラはフィールドカメラや組立暗箱と呼ばれ、イギリスで発展した後世界中で生産されました。今はもう、実用品として常時生産しているメーカーは極めて少なくなりましたが、日本は古くから指物の技術が培われてきたこともあり、東京都内を中心に数軒のメーカーや販売会社が残っていて、世界有数の木製カメラ生産国として業界では知られています。
これも不思議な縁ですが、世界的に人気のあるメーカーは、ウィスタ(板橋区常盤台)、エボニー(板橋区大山)、タチハラ写真機製作所(北区豊島)など、なぜか東武東上線の沿線周辺に集まっています。
私もエボニーやタチハラの木製カメラを愛用していますが、タチハラの4×5判には大学の卒業制作でもお世話になりました。標準レンズ1本と数枚のフィルムホルダーだけを持ち、新雪の武蔵嵐山渓谷や早春の越生梅林、彼岸花咲き乱れる東松山の都幾川堤を撮り歩いたのも、今は懐かしい思い出です。
限られていたカメラ向きの木材
タチハラでは国産素材にこだわり、北海道の日高山脈で育った樹齢300年以上の朱利桜(ヤマザクラの一種)を十分枯らして加工していますが、近年は資源が枯渇してきこともあり、他社では輸入木材の方が主流になりつつあります。ウィスタでは奈良県吉野産の桜材や輸入の紫壇、黒檀材の中から素材を選べますが、エボニーでは強度の利点からも輸入の黒檀、マホガニー材の使用に徹しています。
工芸品としての趣きも魅力ですが、カメラが精度と耐久性とを求める精密光学機器である以上、使用できる木材も自ずと限られてしまうのは止むを得ません。趣味でカメラを手作りするなら自由に素材選びを楽しむこともできますが、商品として買ってもらおうとなると話しは別です。
地場産業との結び付きに期待
お隣のときがわ町は「木のむら」を宣言するスギやヒノキの名産地で、私の住む小川町とともに、昔も今も日本有数の建材や建具、家具の産地です。ところが地元ブランドで流通する機会が乏しく、近年は安い輸入木材におされてしまい、関東でさえ知名度はそう高くありません。需要低迷から林業も斜陽化傾向で、手入れの行き届かなくなった森林の荒廃も心配されています。新しい木材の需要開拓は、これまでにも度々町おこし、村おこしの一環として検討されてきたようですが、まだ大きな成果は得られていないのが実状です。
今回オリンパスが発表した成形加工技術は、これまでカメラにはほとんど不向きだったヒノキ材も、装飾性を兼ね備えた適材に変えられるところが快挙だと思いました。デジタルカメラのような製品なら部材はそれほど大きくなくて済むので、例えば間伐材の新しい需要の掘り起こしに結び付くかもしれません。また、かつては薪や炭などの燃料や堆肥材料を得るため利用されていた雑木林も、豊かな植生を回復させ様々な装飾用木材の生産林として活用できれば、放置による荒廃も防止でき素晴らしいと思います。併せて、プラスチック使用と比べ環境への負荷がどう変わるかも、注目したいところです。
私は表現のための道具として、楽器や画材、筆記具、舞踏などの小道具には今も伝統的に木材が豊富に活かされているのに、なぜかカメラは急速にプラスチック化されてゆくことに寂しさを感じていました。だから、ヒノキのように私たち日本人に愛されてきた身近な木材がカメラにも利用できる時代が来たことに、新鮮な感動を覚えました。
願わくばそう遠くない将来、地域の学校アルバム撮影の仕事でも、子供たちのために地元産の木材が使われたカメラを持って訪問できるようになれば良いな、と思っています。
項目: 写真・カメラ , 町づくり・町おこし , 自然利用・環境保全
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» 大人なデジカメ from 池袋サラリーマン通信
ITメディアの記事参照
Photokinaのオリンパスブースで、木材を独自技術で加工してコンパクトデジカメのボディに応用する技術が展示されていた。木目と... [続きを読む]
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