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2007年01月07日

ちょっと遅めの初夢 -フィルムカメラ再び-

ペンタックスブランド誕生50周年記念の年明けに

お正月気分がまだ抜けません。
昨年末の記事(12月31付)でも触れた「カメラ年鑑 2007」(日本カメラ社刊)をめくりながら、ふと思い出してしまいました。
今からちょうど50年前の1957年、それは「ペンタックス」の名を初めて冠した35mm判一眼レフカメラ、初代アサヒペンタックスが発売された歴史的な年だったのです。

当時、月刊「アサヒカメラ」誌(朝日新聞社刊)は9月号掲載の「ニューフェース診断室」記事の冒頭で、

国産第2号のペンタプリズムつき一眼レフとして生まれたアサヒペンタックスは一眼レフ専門メーカーである旭光学が、全力をそそいで完成したカメラだけに、発表当初から人気を呼び、売れ行きも好調のようである。このカメラは、初めから本格的な量産型として世に送り出され…〔中略〕…ペンタプリズム式一眼レフというものが、日本で流行するかどうかの試金石になるという、重要な意義も含まれている。…〔中略〕…ペンタックスが、将来よりよいカメラに発展する一助ともなれば、このリポートは意義深いといってよかろう。

と紹介しています。
初代ペンタックスが「試金石」としての大役を見事果たせたことは、翌年発売の2代目アサヒペンタックスKの名が、新発売された話題のデジタル一眼レフK10Dにも受け継がれていることを見ても明らかです。

話の流れが飛びとびになりそうなのでまとめます。
私の心は高校時代にまでさかのぼり、写真の勉強のため初めて買うフィルム一眼レフを探すつもりで「カメラ年鑑 2007」を眺めていたのでした。現像タンクや引伸機などは、写真部(私の母校の場合、正しくは光画部)の暗室に揃っています。
さて、35mm判の選択肢は4社8機種。うち、貧乏学生の懐事情に見合うものは2社3機種。新製品は無し。さあ、決めるのだ!
「やっぱ、ニコンFM10(希望小売価格税込38,850円)かな…」
純然たる機械制御式の全手動カメラで、フィルムを入れさえすれば電池が無くても写真が撮れる頼もしい存在です。小さくて可愛らしいのは女子部員にも喜ばれそうだし、何よりお父さん(お爺ちゃん?)が小さかった自分を写してくれたときのカメラみたい、というところがどこかしら郷愁をそそります。
ところが発売元のニコンはもう、FM10に使える交換レンズを開発する気配がありません。むしろ、徐々に減りつつあるようです。最新シリーズのレンズでは、装着できても絞り機構が連動せず、露出(明るさ)の調整ができないのです。
「…却下」(←独断)
反対に、こうしたクラシカルな一眼レフにも使えるような交換レンズの発売を今後も予定しているのが、かのペンタックスです。
最新シリーズのひとつ、D FAレンズシリーズはオートフォーカス式のデジタル撮影対応設計ですが、マニュアルフォーカスの操作性も見直され、かつ30年以上前の35mm判フィルム一眼レフにも何ら不自由なく使用できるという優れもの。デザインも「なんとなく、クラシカル」です。今はまだ、2年ほど前に発売されたレンズが2本あるだけですが、メーカーの「レンズ開発ロードマップ」(PDFファイル)によれば、今年は少なくとも望遠レンズ2本が追加される模様です。気になるのは肝心のカメラ本体ですが、
*ist(イスト。*は発音しません)。…それだけ?」
希望小売価格税込68,250円也。予算オーバー。
想定の範囲外でした。無念。
(↑強引?)

話がぜんぜんまとまらないので、まとめます。
「中古を探す…」
前に、要はニコンFM10にペンタックスD FAレンズが使えれば良いのではないでしょうか。と言いますか、ペンタックスもFM10のような機種を発売すれば良いのではないでしょうか。
既報の通り今年10月、ペンタックスは光学材料メーカーのHOYAと経営統合し、新会社HOYAペンタックスHDが発足します(2006年12月27日記事参照)。実はそのHOYAの傘下にある写真用品メーカーのケンコーが、ついこの間までベッサフレックスTMという、FM10に“とても”よく似た(それでいてずっと高級感のある)一眼レフを発売していたのです。税込定価も52,500円ですから、まぁ、想定の予算内ということにします。交換レンズも、初代アサヒペンタックスと共通の規格でした。しかし残念なことに、その規格のレンズの開発をペンタックスは1975年以降打ち切ってしまっています。もどかしいですね。

もどかしいのでまとめます。
ベッサフレックスTMはりんごのふる里、長野県にある光学メーカー、コシナが設計、生産を請負ったカメラでした。それは、同社がかつて他のブランドで輸出用、通販用に生産していた(ひょっとしてまだ生産している?)一眼レフをベースにリニューアルしたものです。そのベースとなった一眼レフこそ、何を隠そう、ペンタックス現行のD FAレンズが使用できる規格のカメラだったのです。
そのような一眼レフをペンタックスの商品として、ペンタックスブランド誕生50周年記念事業の一環として、世に出すことはできないものでしょうか。コシナはファンの注文がまとまれば、過去の製品でも再生産してくれる職人気質の良心的なメーカーなのです。いや、やるだけならそう難しくはなさそうだから、あとは商談が成立し得るかどうかの問題でしょう(余談ですが、以前ペンタックスから発売されたFAマクロ100mmF3.5という交換レンズは、コシナの製品とほぼ同じものでした)。ベッサフレックスTMの生産も済んだので、その分工場にも余裕があるのではないかと思われるのですが…。
じゃなくて、ペンタックス50周年記念カメラは出るんです、きっと。ベッサフレックスTMはその試金石で、だからあえて生産は去年中に打ち切られた。発売元のケンコーも、その親会社のHOYAももとより承知の上。2年前に先行発売された2本のD FAレンズも、そのカメラに似合うデザインの検討を兼ねたものに違いありません。加えて国産眼鏡レンズでは知る人ぞ知る老舗中の老舗同士が創設するHOYAペンタックスHDの発足、ペンタックスデジタル一眼レフの決定打と言うべき新生Kシリーズシステムの充実、そしてコマーシャルフォトグラファー等に期待の大型イメージセンサーを採用した645 Digitalの発表、それらすべてのタイミングがピタッと重なったのももはや単なる偶然ではなく、今年のために水面下で着々と準備が進められてきた一連の事業なのではないでしょうか。

際限なく妄想がエスカレートしていきそうなので、このくらいにしておきます。
これはあくまで個人的な心情ですが、ペンタックスには国産初の35mm判一眼レフカメラ、アサヒフレックス1型を生み出しそのオーソドックスなスタイルを確立させたメーカーとして、これからもずっとこうしたジャンルのカメラを、他社がやめても発売し続けていって欲しいと思うのです。私もそうですが、ペンタックスの一眼レフで写真入門を果たした思い出を持つ人は、プロの中にも少なくはありません。また、まだ使った経験のない人でも、いつか余裕のできたとき、興味のあるレンズとの組み合わせを選んで持ち歩いてみたいと思っている人も結構いるようです。フィルムで写真を撮る機会は私もだんだんと少なくなってきていますが、このカメラで写真を撮りたいと思うから昔ながらのフィルムを使う、という発想もあって良いと思います。船員を目指す学生さんは、今も練習帆船で世界の海へ実習航海に出て行くではないですか。船乗りを夢見る若人たちの憧れです。
私見ですが、現像などの後処理も含めフィルム撮影とデジタル撮影とを同時に体験することは、混乱するどころか、どちらか一方に偏るよりもずっと学習効果が高まるように思われます。フィルム撮影や現像処理の経験があるからこそ画像処理ソフトの覚えも早く、逆に画像処理ソフトを使いこなせればこそ撮影や現像のシミュレーションに活用することだってできるはずです。でも、そのためのフィルムカメラが生産されなくなれば、そうした体験も叶わなくなります。
物だけではなく人や文化も創り続ける。それが歴史あるメーカーの責任というものかもしれませんね。ペンタックスは35mm判だけでなく、フィルムサイズのより大きい645判6×7判の一眼レフも生産している世界唯一の奇特な総合一眼レフメーカーでもあるのです。

ところで「カメラ年鑑 2007」によるとコシナは昨年、独逸の名門光学メーカー、カール ツァイスとの共同開発による35mm判一眼レフカメラ用高級交換レンズシリーズの生産をスタートさせています。それらはニコンFM10の規格やベッサフレックスTMの規格にそれぞれ合わせて設計されたものですが、どうして今のペンタックスにも使える規格のものがケンコーから発売されないのでしょう。もしかすると、先述のペンタックス50周年記念カメラ(妄想)の発売にタイミングを合わせ、商品企画として密かに用意されているのでは?
昨年秋のフォトキナでの、ペンタックス幹部の方の自信に満ちたインタビューの真相も気になります(2006年10月5日付記事参照)。

表題に「ちょっと遅めの初夢」と書きましたけど、「初夢」じゃなくて“白昼夢”、でしたね。
長い長い初白昼夢で、たいへん失礼いたしました。

項目: 写真・カメラ

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